小説 | ナノ


▼ 海常


「笠松先輩、森山先輩、小堀先輩」
「お、はるちゃん」
「卒業おめでとうございま、す、」
「おめでとうっス」
「ッス!」


3月1日全高校で卒業式が行われているであろう。それは海常ももちろん同じで。今日で3年組が卒業してしまうのである。確かにめでたい、とは思うけど、思うけど、寂しくないわけもない。


「あー、泣くなよ」
「はるちゃんが俺のために泣いてる…!?」
「卒業しないでくだざいぃぃぃ」
「泣かないでよ」


困ったように笑いながら頭を撫でてくれる小堀先輩の手に余計に涙腺が緩んだ。今日でこの手に撫でられるのも、最後なんだ。


「小堀せんぱい、」
「一生会えないってわけじゃないんだからさ」
「でも、小堀先輩遠くに行くって、」
「呼んでくれたら来るから」


小堀先輩の手が離れていって、なんだかそれがすごく寂しく感じた。


「絶対ですよ」
「うん」
「迷惑かけちゃだめっスよ」
「黄瀬くんだって」


黄瀬くんと早川先輩と中村先輩と3人でグズグズしてたら笠松先輩がため息を吐いた。


「うるせえよお前らグズグズグズグズ!死んだわけじゃねえんだ、もっと祝えよ!」
「だっで、がざまづぜんばい、も、もりやまぜんば、い、もとおくにいぐっ、で」
「何言ってるかわかんねえよ!ちゃんと喋れ!」


笠松先輩最初は全然話してくれなかったよね。女子が苦手で。でもゆっくり時間をかけて話せるようになった。


「うっ、オエッ」
「きったねえな」
「笠松ぜんばい〜〜〜」
「はるちゃんまた絶対会いにくるさ」
「森山せんぱい、そんな簡単に会えるところじゃないじゃないでずがぁぁぁぁぁ」


泣き喚くわたしを森山先輩が困ったように見つめてきた。森山先輩はいつも優しくて気さくで女の子が大好きで、かっこよくて、そんな、そんな先輩が、いなくなるのは悲しい。


「はる」
「っひ、っぐ」
「バスケ部を、支えてやってくれ」
「…ん、は、はい」
「任せたぞ」
「あい〜っ、」
「だから泣くなっつってんだろうが」



みんなを引っ張る先輩達の背中はかっこいいです。



さよならじゃない
(きっとまた)

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