小説 | ナノ


▼ 口移し


「飲め」


風邪を引いて学校を休んだら赤司くんがお見舞いに来てくれた。あたしの大嫌いなヤツと共に。


「薬なんか大嫌いだ!飲むもんか!」

「飲まないと治るものも治らないぞ」

「寝てりゃ治るよこんなの」

「つべこべ言わずに早く飲め」

「やだ!」


はぁ、とため息をつく赤司くんからフンッと目を逸らした。薬なんか飲むものか!

なんで小さい子の薬はいちご味であたしはクソ苦いの!あたしもいちご味がいいよ畜生!


「はる、君は子供か」

「そう子供。だからいちご味持って来て」

「そんなに飲みたくないのかい?」

「絶対」

「そうか。飲まないなら飲ませるまで、だ」


あれ、これちょっとまずいんじゃないか?まってこれちょっと赤司くんまって。


「飲むよ!やっぱ飲む!飲みます!」

「そう言って飲まない気だろう」

「何故バレた!」


もう一度はぁ、とため息をついた赤司くんは薬に手をつけた。ビリビリと袋を破りそれを水と一緒に自らの口に入れた。

あ、やっぱりこれマズイ。あかんやつや。と悟り後退しようとした時にはもう遅い。

グイッと後頭部を掴まれ引き寄せられたかと思えば唇に柔らかい感触があった。言わずもがな赤司くんの唇で。


「んぐ、っ…、んっ、」


無理矢理あたしの唇を舌でこじ開けて薬を移してきた。所謂口移しだ。そしたらもう飲み込むしかない。飲み込まなきゃ息出来ないし苦しいもん。

ゴクリと薬を飲み込んだあとも赤司くんは離れていく様子がなく、寧ろあたしの口内をさらに犯す始末だ。


「ああ、悪い。薬を飲ますつもりが、つい。」

「つ、ついじゃないよバカ!!」


やっと唇が離れたかと思えば赤司くんはニヤリと妖艶に笑った。赤司くんはなにしても綺麗だなあ。なんて考えていたら赤司くんが口を開いた。


「はる、薬が飲めないなら僕を呼ぶといい」



口移し
(呼ぶかバカタレ!)

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