小説 | ナノ


▼ 赤司と紫原



「敦か?」

「赤ちんじゃーん」


今日はバスケ部が長引いてそのマネージャーのあたしももちろん長引いたわけだ。

そしたら赤司くんが暗いから送る、というもんだからお言葉に甘えさせてもらうことにした。

そしたら紫の人を見つけて声を掛けた。そしたら必然的にあたしも立ち止まるわけで。


「久しぶりだな、敦」

「そうだね〜」


間延びした話し方の彼の片手にはお菓子。たぶん怖い人ではないのかな、と思う。


「赤ちん、その子だれ〜?」


その子、とあたしを指さす紫の人に肩をビクつかせたら赤司くんがチラリとこちらを見て、すぐに視線を紫の人へと戻した。


「バスケ部のマネージャーだ」

「あ、前田はるっていいます、」

「ふーん。ちっさいね」

「敦が大きいだけだよ」

「そうかもね〜」


あはは、と緩く笑う彼に緊張感が解けた。

だが人見知りなあたしは自分から会話にはいることなんかできる訳がなく、困った。

どうやら彼は用事とかで遠くからここ京都まで来たらしい。


「はるちんはバスケ好きなの〜?」

「はい、好きです」

「へー。」


自分で聞いておきながらさも興味がないかのような紫の人にますます困った。

するとそれを察してくれたのか、赤司くんがそろそろ行こうか、と言った。


「じゃーねー赤ちんとはるちん」

「は、はい!」

「ああ」


あ、名前覚えててくれた、なんて少し嬉しく思いながら少し前を歩く赤司くんの背中を追った。


「赤司くん」

「なんだ?」

「ありがとう」


そう言ったら赤司くんは少し驚いたようにパチパチと瞬きをした後、柔らかく微笑んで一言二言声を返してくれた。



知っているかな
(僕は君には愛想笑いなんかしない)

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