「せーんぱーい」
「またあんたっスか」

なんとなく予想はしてたけどね。彼女の姿を確認してから貼り付けた営業スマイルを引っ込めた。

「先輩、今日遅刻しました?しましたよね?見ましたよ〜」

はるちゃんがどんな子なのか一言で表すとすればストーカーが適切だと思う。単に俺のストーカーだから。限りなくうざいストーカー。

「これから遅刻しないようにわたしがモーニングコールしてあげましょうか?」
「いらないっスよ。何ちゃっかり番号手に入れようとしてるんスか」
「もっと見下してください!!!」
「もうやだこの子」

正直はるちゃんには参ってる。いつも俺の言葉に表情ひとつ変えない。何考えてるのかもさっぱり読めない。もうお手上げ状態っス。

「あ、先輩ちょっとだけ前髪切りました?」
「…よく気付いたっスね。5cmも切ってないっスよ」
「好きだからだよおげふげふぇ」

気持ち悪い声を発してニヤニヤしてるはるちゃん。かなりヤバイっス。

「一応女の子なんだからやめなよ」

そう言いながら軽く叩いたらはるちゃんはわざとらしく痛がって叩かれたところを摩った。

「先輩責任とってくださいよね!」
「そんな強くやってないっスよ」
「だって先輩怪力じゃん」

なんでそこだけタメ口なんスか。腹立つなあ。ほんとにこの子は読めない。好き好き言うわりには付き合いとか求めてこないし。

「先輩ってほんとイケメンですよね〜。」
「なんスかいきなり」
「いやあのね、わたしこの間秀徳行ったの。おバカさんな幼馴染に会いに。そしたらそのおバカさんな幼馴染の相棒がキセキの世代だったんだよ」
「緑間っち?」
「そうそう真ちゃん」
「てことはあんたあの高尾って人の幼馴染っスか」
「うんうん。あのおバカさんね」

まさかの。世界って狭いっスねえ〜。はるちゃんと緑間っちが知り合いなんて。

「それでねー、真ちゃんは美少年って感じじゃん?すごい見惚れちゃったんだよね。そこでわたし美少年とイケメンの違いを知ったの」
「あ、そうっスか」
「うん」
「…で?」

話したいだけ話して黙り込むはるちゃんに特に対した返しはせずにで?とだけ返したらはるちゃんがいつもみたいに大口を開いて笑った。

「わたしは美少年派でもイケメン派でもなくて黄瀬涼太派!!」

なんかすごい臭いこと言ってるなあとか、別に聞いてないよ、って思ってたんだけど、なんだろう、この感じ。



あ、わかった
(ときめきっスね)