憂鬱だ。すごく憂鬱だ。

「アニ、危ないから気をつけて」
「分かってる」

いや、ね、これくらいでやきもちなんかやくもんじゃないって分かってはいる。分かってはいるんだけどやっぱり好きなもんは好きだし感情には逆らえない。

「わ、だから言ったじゃないか」

困ったように眉を下げて笑うアルミンの腕の中にすっぽりはまるアニ。大丈夫あれは転びそうになったのを助けただけ。浮気じゃない。大丈夫大丈夫。

「はる?なに怖い顔してんだよ」

アニとアルミンの様子を見てたら怖い顔になっちゃってたらしいわたしにエレンが声をかけてきた。今日も目ん玉ギラギラですね。

エレンとはすごく気が合う。みんなにもお前たちそっくりだな、って言われるくらいに仲良し。そんなエレンと今日もいつも通り他愛も無い会話をしてた。

「お前またサシャの寝込み襲ったんだってな」
「だって可愛いんだもんサシャ」
「いやでもお前そりゃねえよ」

ケラケラ笑いながら話すエレンに笑いすぎだとデコピンを喰らわしてやった。痛えよ!と嘆くエレンにベロを出したらデコピンされた。エレンはバカだから手加減とかしない。それがもう痛いのなんのって。、

「痛いよバカ!」
「お前から手出しできたんだろ!」

それから2人で軽い言い合いをしてたらアルミンが仲裁に入ってきた。

「やめなよ2人とも」

苦笑しながら制止をかけるアルミンにさっきのことを思い出してふい、と顔を逸らした。可愛くないなあわたし。

「はる?どうしたの?」
「なんでもない」
「なんでもないことないでしょ」
「なんでもないったら」
「はる」

あまりにも優しい声で呼ぶもんだから振り向いてしまった。そこにはエレンがいなくてアルミンだけがわたしを見つめてた。それで目が合うとアルミンが微笑んだ。もう、ばか、わたしはその顔と声に弱いんだよ。

無言でわたしを見つめてくるアルミンがわたしの言葉を待ってるみたいで思わず口を開いた。

「や、やきもちやいただけだもん!」
「…え?」
「っなんでもない!忘れて!」
「ふふ、ごめんね」

なんでも見透かしたように目を細めて優しく微笑んだアルミンに顔が熱くなるのを感じた。

「でも大丈夫だよ。僕君が思ってる以上に君のこと好きだから」

そう言ってわたしの唇に甘ったるい口付けをおとしていった彼にわたしはきっと勝てない。



やきもちやいただけだもん!
(僕だってやいてるよ)



お題は レイラの初恋 様からお借りしました