小説 | ナノ


▼ 神威

地球では今日はエイプリルフール、っていう嘘が許される特別な日らしい。

それで、そんな事知らないであろう団長に嘘を吐いてみた。

が、しかし結果は後悔。


「船をおりようなんて、本気で言ってるの?」


いつものニコニコ笑顔で尋ねてくる団長に少々怯えながらもコクコク頷く。

今更、嘘だなんて言えなくなってしまった。


だけど正直、半分本当だったしこのままおりちゃおうかな、とも思った。

別に団長が嫌いになった訳ではない。寧ろ大好き。誰よりも団長が好きで、大好きで、それでもって、怖い。

あたしは弱いから、いつか団長に、この船に、捨てられるんじゃないか、って考えたら、怖い。あたしは弱いから強い子は産めない。それだったら団長にあたしは必要ない筈。

あたしは、ただの足手まとい。


「何で?」

『あたしは、弱いから春雨に合わないよ』

「弱い?はるが?」

『うん』

「今頃そんなの気にしたって何も変わらないだろ?お前が弱いのは誰もが知ってるヨ」

『団長は、弱い奴には興味ないでしょ?』

「うん。戦い様がないからね」

『じゃあ、あたしは、』

「はるは俺や七師団と戦いたいんだ?」


いきなりのおかしな質問に慌てて首を振る。



「それなら、弱くたっていいんじゃないの?」

『で、もっ…』

「それにお前、夜兎に比べては弱いけど、人間と比べたら地球のお侍さんにも負けてないんじゃないの?俺はそんぐらいで充分だと思うけど?その方が守り甲斐もあるしネ」

『っ、だんちょ…、』

「この船に居なよ」

『は、いっ』


そう答えると団長は満足そうに笑った。


『…それとね、団長』

「なに?まだ何かあるの?」

『今日地球では嘘吐いても許される特別なエイプリルフールって日で、その、あの〜、』

「…今の全部嘘だったり?」


素直にコクン、と頷くと団長がいつもの笑顔を貼り付けて、アホ毛がゆらゆら揺れた。

これはマズイかもしれない。


「殺しちゃうぞ?」

『ごごごめんなさいいいいいい!でも半分は本当に悩んでた事だから!』


そう言ったら団長はあたしの腕を引いて、少し強引にキスをした。


「次はその口、犯すヨ?」

『もう嘘つきません!』



貴方の背中を追って
(もう、見失ったりしない)

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