小説 | ナノ


▼ 桂小太郎

『ヅラァァァァ』

「ヅラじゃない、桂だ」

『小太郎、あたしもう飽きた!』

「何にだ」

『小太郎』

「何を言っている?」

『別れて、あたしと』

「正気か?」

『正気』

「…気に障る事をしたのなら謝る。もう一度考えてはくれぬか?」

『やだ』

「そうか、ならば再び惚れてもらうしかないようだな」


そう言うなり小太郎は妖しく笑ってあたしの髪に手をかけた。そして優しく髪の毛を梳く小太郎。


「はる、愛している」

『なっ、ちょ、』


普段こんなクサイ事言わない小太郎だからドキッとした。

これはやばい。シャレになんないぞ。あとからエイプリルフールデースなんて言って許されるだろうか。

そうこう考えてるうちにも小太郎は甘い言葉をいつにも増して低くて甘い声で、しかも耳元で囁く。

あれ、小太郎ってこんな人だっけ?


『ひゃあああああ!むり!ごめん!謝るからやめてくださああああああい!』

「何故はるが謝る?」

『あ、あのね、これ、嘘だよ』

「嘘?」

『エイプリルフールでしょ、今日』

「この馬鹿が…」


そう言ってあたしの髪の毛をくしゃっと握りしめた。

その手がそのまま後頭部に回されて、あたしを強く引き寄せた。いきなりの事によろめくあたしを支えながら、小太郎があたしの唇に深く口付けた。

今日の小太郎はどこか大胆だ。


「エイプリルフールといえど吐いていい嘘とだめな嘘がある」

『ごめん』

「全く、相変わらずだな」

『でもね、小太郎、』

「なんだ?」

『愛している、って嬉しかったよ』


そう言うと小太郎フッと笑った。


『あたしも、愛してる』

「…そうか」



もう一度、優しく口付け
(嘘は嫌いだがはるは好き)

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