『今日もだめ、か』

「よぉ」

『あ、こんにちは』

「何してんだよ」

『何も』

「何もって事ねぇだろ。お前まだ万事屋行ってんのか?」

『うん』


朝万事屋に行ったらやっぱり今日も断られた。そりゃそうだよね。住まわせてなんて非常識過ぎるよね。分かってはいるんだけどな。

銀ちゃんは何も分かってない。言ってないから当たり前の事なんだけどね。言うつもりもないし。

この事は誰にも言いたくない。言いたくなかった。でもある時にひょんな事から真選組の土方さんと沖田さんにバレてしまった。


でも良かったと思ってる。ばれたのがこの二人で。


「で、ダメだった訳だ」

『うん』

「いい加減諦めろよ」

『やだ』

「…俺らが口出しすることじゃねぇからもう何も言わねぇよ」

『…ありがと』

「じゃあ今日もホテルなんですかィ?」

『うん』


あたしの家は所謂お金持ち。家の後継ぎのあたしは外に出た事も少なければ、友達も少ない。

皆あたしが財閥の娘だと知った途端お嬢様だとかお金持ちだとかで一線引いてくる。親でさえもあたしをほったらかしで仕事仕事仕事。いつの間にか一線も二線も引かれてた。


そんな暮らしが嫌になって、普通の暮らしがしたくなって、隙をみて家を飛び出した。通帳とカードだけを持って。

しかし行く所がない。家を買ったって毎月毎月家賃を払っていれば流石にお金も無くなる。それに住所が特定すればきっとすぐに捕まる。働こうにも履歴書がアレじゃ働けない。


『もうだめー』

「何がでさァ」

『限界!疲れた!沖田さん、土方さん、思いっきり遊びましょうよ!』

「俺はいいですぜィ」

「…仕方ねぇな」

『やった!あたし遊園地行ってみたいです!それから屋台とか、行ってみたいです!』

「どこでも連れて行ってやるよ」

『ありがとうございます!』

「ああ」


遊園地も屋台も初体験のあたしにとって、本当に嬉しい事だった。



何もかも大きな壁が邪魔をするの。



(早く行きましょうよ!)
(そんな急がなくたって遊園地は逃げねぇよ)
(屋台行った事ないなんてねィ)



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