どこまで走っても、どれだけ走っても疲れを感じないほど、無我夢中で走った。

神楽も新八も俺も心配でたまらない。が、1番心配してるのはたぶん、ヅラだ。

いつものツラとはまったく違う、あの頃を思い出す程真面目な表情に誰よりも先を走り、他には目もくれない。

ヅラと俺らの間には差があった。普段から真選組から逃げてるからか、はたまたはるのためだからか、どうやっても追いつけねえぐらい速ぇ。

「ヅラ、ッどこまで走るっ気だ、!」

「黙ってついて来い」


ハッ、息も切れてねぇってか。化け物かテメェは。

それからヅラが立ち止まったのはかなり走ったところ。


「銀時」

「あ?」

「お前らは裏に回ってくれ。変わっていなければ青のカーテンの部屋、そこがはるの部屋だ。そこの下に居てくれ」

「お前はどうすんだよ」

「はるの両親とは顔馴染みだ。正面から行く」

「…分かった」


ヅラに言われた通り、3人で裏に回った。にしてもデケェ家だなぁ。


「銀さん!あれ、青のカーテンです!」

「…ああ」

「あそこにはるが、居るアルか?」

「たぶんな」


それから物音もせずただただその場に立つ時間が続いた。

暫くした頃の事。


「銀時!」


ヅラが戻って来た。


「はるは、」

「部屋に居る。怪しまれるといけないからな。一度戻って来たが時期にはるはそこから顔を出すだろ」


そこ、と青のカーテンがついた部屋を指差したヅラ。

どうやらはるに話をしたらしい。


「ただ、」

「?」

「はるが行かないと言っている。顔を出しても助け出せるかどうかは」

「なんで、あいつは、」

「…あいつの事だ。予想はつく。だが説明は後みたいだな。」


そう言って再びはるの部屋を指差した。


「はる!」

「はるさん!」

「…なん、でみんなが、」


2階に居るからよく聞こえねえが驚いてるのは目に見て分かった。

そんな中、ヅラが控え目に声をあげた。


「はる、お前が行きたくない理由は分かった。」

「そ、っか」

「だが俺はお前が行くと言うまで帰る気はない。お前が行きたくない理由、そこの2人も連れて来るといい。」

「…そんな、」

「はる!来い」

「…っ、い、行きたい…!」

「ああ。」

「でも、鍵閉まってる」

「…飛べ。必ず俺が受け止める」

「え!?む、むりだよそんな、」

「時間がない、急げ」


はるとヅラのやり取りを黙って見てはいたが、ヅラの言う事はあまりにも無茶苦茶だ。

でも方法がそれしかねぇなら仕方ない。


「はる、飛べ!」

「ぎ、銀ちゃん、」

「はる、はやくしろ!」

「ぜ、ったい受け止めてよ!?」

「ああ」

「、せーのっ」


窓に片脚を載せて思い切り乗り出したはるは丁度ヅラの所目掛けて落ちて来た。

ヅラもそれを難なく受け止めた。


「こたろ、」

「上出来だ」


そう言って微笑むヅラ。こうして見ると俺らはなんのために来たのか分からなくなる。

ヅラ1人でも大丈夫だったんじゃないか、と。


「銀時、」

「あ?」

「はるは頼んだ」

「は?いや、待てお前は、」

「表に真選組が来ている。この財閥も終わりだな」


真選組から逃げるため、とヅラははるを俺に任せて来た。


「はるはどうやら腰が抜けているみたいだからな。抱えてやれ」

「ああ。」




無事救出できました。
(ごめんね、銀ちゃん、神楽ちゃん、新八くん)







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