『申し訳ありません、お父様お母様』

「…いいんだよ。無事で何よりだ」

『ありがとうございます』

「外に出たい時はきちんと言ってから出なさいといったでしょう?」

『はい。すいません』


言ったって、外に出してくれないくせに。話さえも聞いてくれないくせに。

本当は知ってるんだよ、二人とも、あたしが嫌いで、邪魔で、仕方ない。でも将来のために残してる、それだけ。


「しばらくは部屋で休みなさい」


あたしが部屋に入ったら何するの?また鍵を閉めて閉じ込めるの?

…そんなこと、言える訳もなく、素直に頷いて部屋に戻った。


『…はぁ』

「はるさん」

『シロ、どうしたの?』

「いえ。寂しいかな、と思いまして」

『そっか。シロには何も隠せないね』

「小さい頃から見てますから」


シロの言葉にあはは、と笑えばシロも目を細めて笑った。カラクリのくせに、無駄に綺麗な顔してるよなぁ。


「……クロ、シロ」

『?』

「俺達の名前、はるさんがつけたの覚えてますか?」

『あー、覚えてるよ。あたし小さかったから犬感覚でつけたんだよね』

「そうです。小さい体でよく俺達に構って構って、と寄ってきてましたよ」

『恥ずかしいね。』


いきなり昔話を話し始めたシロ。思い出すと面白い事ばっかで、笑えてくるなぁ。


「あの頃、クロにも少し人間っぽいところありましたよね」

『うん、あったあった』

「…少し長話になりますが、聞いてくれますか?」

『聞きたい!』


そう言って食いつくとシロはふふっと笑って話し始めた。


「昔、小さいはるさんがどこから聞いたのか、俺達に"お人形さんなの?"って聞いてきたんですよ」

『うん』

「それでそうだよ、って答えたらはるさん泣き出したの、覚えてますか?」

『全然、覚えてない』

「でしょうね。じゃあ何で泣いたと思いますか?」

『んー…怖かった、とか?』


そう言うとシロは首を横に振った。


「"寂しい"」

『へ?』

「小さい子供が寂しい、と言ったんです」

『……』

「何で寂しいのかは聞きませんでしたが、その後はるさんが"あたしの幸せ半分あげるから、人間になって"って言ったんです」

『子供って恐ろしいね』

「それから俺は少しずつ、人間の感情というものが芽生えてきたんです」

『そうなんだ…』

「それとは反対にクロは、おじ様に"私の下で私に従う事がはるの幸せだ"と、言い聞かされたらしいんです。」

『え、じゃあ…』

「クロははるさんの幸せのためだと思って今までおじ様に従ってきたんです」


シロの話を聞いて、言葉が出なかった。クロが、あたしの幸せのために従っていたなんて、思ってもいなかった。

クロはただ単にカラクリとして働いてるだけなのだと、思ってた。
あたし今まで二人の何を見てきたんだろう。

それじゃああたし、今まで二人に酷いことしてた?あたしの幸せを願う二人から逃げて、寂しい思いさせて、最低じゃんか。



もうここから逃げ出すなんて出来ない。



(ずっと、一緒に居るから)



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