『万事屋銀ちゃんってさ、』

「んー?」

『お客さん来るの?』

「…それは禁句だぞー」

『来ないんだ。神楽ちゃんと新八くん可哀相。どうせ給料とかろくにあげてないんでしょー?』


こんな感じでいつも通り二人でのんびりのんびりしてた。

そしてあたしの目に止まったのが銀ちゃんの読んでる漫画、ジャンプ。


『銀ちゃん、ジャンプって楽しいの?』

「おま、そりゃもう楽しいのなんのって、そんなんじゃ表せねぇよ!」

『…ごめん聞いたあたしが馬鹿だったよ』

「ったく。何だよ自分で聞いておきながら俺の語りは聞いてくれねぇのかよ」

『だって長そうなんだもん。あたし寝ちゃうよ?』


そう言ったら銀ちゃんはため息をついてから小さく笑いかけてくれた。それからまたジャンプに釘付け。

たまにあたしも読んでみるけど、何がなんだかよく分からなかった。まぁ途中から読んだら誰でもそうなるわな。


『少女漫画とかは読まないの?』

「男にそれを聞くかぁ?少女漫画は少女が読むから少女漫画なの。俺が読んだら気色悪ぃじゃねぇか」

『確かに』

「銀さんそこは否定してほしかったな」

『…でも銀ちゃん何もかも投げやりだから恋愛の見本にでもしてみなよー。紳士を見習え!そしてもっとあたしに優しくなれ!』

「無理無理。そんな面倒臭い事銀さんはまっぴら御免だねー。そもそも恋愛とか面倒なわけよ


…ピタッと時間が止まったみたいに思考が停止した。

恋愛が面倒、そう言った銀ちゃんは至って軽口。真面目に言った訳でもふざけて言った訳でもない、何気ない一言だと思う。


でもあたしにとっては重要な事。恋愛が面倒って事はあたしも面倒なのだろうか。そう思ったら嫌な汗をかく。


『……銀ちゃん、恋愛面倒なんだ…?』

「あー、うん。」


ジャンプを読みながら適当に返答する銀ちゃん。


『恋愛、面倒…』

「何、さっきから……って何泣きそうな顔してんの」

『だって、銀ちゃんが、』

「あー、そーゆー事ね。はいはい勘違いしないでね。」

『?』

「確かに恋愛は面倒だけど誰がはるが面倒だって言ったー?」

『でも、恋愛、』


そう言いかけたあたしに銀ちゃんがまたため息をついてあたしの隣に移動してきた。


「俺はお前と恋愛なんかした覚えねぇよ。」

『え、』

「ジャンプと同じ。」

『…?』

「もー、まだ分からない?恋愛だのなんのって、俺らはそんなんじゃ表せないだろ?」



恋愛みてーな茶番じゃねぇんだよ。

ニヤリと笑った銀ちゃんが好き過ぎてたまらない。
確かに茶番なんかじゃないよ、あたしの銀ちゃんに対する気持ち。




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