小説 | ナノ

あれから何日たったか分からないけど宇宙の生活にも大分慣れてきた。不便も無いし陸奥さんも良くしてくれるから楽しいに越したことは無い。だけど一つ問題があるとしたらやっぱり銀時に会いたい。

「こっちの生活にも慣れたか?」
「うん、陸奥さんも他の人たちもよくしてくれるし不便はないよ」
「他に何か不満があるかえ?」

辰馬になんでも見透かされてる様でサングラス越しでさえも辰馬の目が見れない。それなのに辰馬はサングラスを下にズラしてわたしを見つめてくるもんだから押し黙ってしまう。

「おんしは思っちゅうことがすぐ顔にでるからの〜」

大口を開けて笑う辰馬にどういう顔をしたらいいか分からず顔を逸らした。

「おんしが思っちゅうようにしたらいいぜよ」
「わたしが、思ってるように…」
「そうじゃ。帰りたいなら好きにせえ。ここにおるなら大歓迎じゃ」

頭に辰馬の手が置かれてポンポン、と軽く撫でてから辰馬の手が離れた。そういえば銀時もよくやってくれたなあ。

「辰馬、わたし、」

どうしたらいいのかわからない、そう言葉を繋げようとしたときに艦内に響く爆発音のような音と怒声が聞こえた。

「来よったか」
「え、たつま、ちょっとまって大丈夫なの?」
「大丈夫じゃ」

今の音絶対大丈夫じゃないよね。陸奥さんが辰馬さんを罵るわけが分かった気がする。本当に昔からなにも変わってないんだね。

「た、たつま、なんかこっちに向かってこない?」
「おお〜ヤツの目的はおんしじゃき、当たり前ぜよ」
「は、は、わたし?」

辰馬の爆弾発言にわたしの頭はとうとう着いていけなくなってしまった。わたし殺されんの?ていうかなんでわたし?わたし宇宙に知り合いなんかいたっけな。そうこう考えてるうちに足音がどんどん近付いてきて、ついに、扉が大袈裟なくらいに音を鳴らして開いた。ああわたし殺されるんだ、そう思ってその人物を見上げたら息が詰まった。

「ぎんと、き、」
「はる!!!!!」

いきなり大声で呼ばれて思わず肩を震わせたが銀時はそんなの気にせずわたしの腕を引いて抱きしめた。

「なんでここに?」
「お前が、いなくなるから、」

息切れで苦しそうに肩を揺らす銀時。なんでそこまでして、わたしに?

「バカから電話きて、お前がここにいるって知ってマジで焦って、ヅラの船で、きた」
「なんで、」
「なんでって、そりゃあ、まあ……とりあえず帰るぞ!邪魔したな!」
「おーもう泣かせるんじゃなかよ、金時。次は本気でワシがもらうぜよ」
「誰がやるか」

後ろに辰馬の声を背負いながら銀時に腕を引っ張られて足早に歩く。

「まって、銀時!わたし、」
「帰らないなんて言うなよ」
「でも…」
「…悪かった。お前に寂しい思いさせてんのは分かってたけど、お前に無理はさせたくねえし戦争で戦ってきた分、お前には女らしく生きて欲しかったんだよ」

腕を握る力が少し強くなって痛い気もしたけどそれよりも銀時の言葉に衝撃を受けて痛いのかなんなのかわからなくなった。

「それに、惚れてる女と一緒に暮らしてんのに何も出来ねえし毎日生殺しでいろいろと限界がきて、でもお前に手ェ出したくねえから避けてた。…ほんとに悪かった」
「…あ、えっと、え?」
「もう言わねえよ」
「え、え、まって銀時惚れてるって、え?」
「…うるせえ」

心なしか顔が赤いような気がする。じっと見てたらそっぽを向いた銀時の耳はやっぱり赤い。

「ぎ、ぎんとき」
「…」
「わたしも、銀時のことすき」
「は、いやいやいやマジ?」
「マジです」

まさかこんなタイミングで銀時にいうことになるとは思ってなくて心の準備もできてないしまさかの両想いだしでわたしの顔はたぶん真っ赤だ。

「やべえわ俺マジでやべえわ」
「うんわたしもやばい」

握られた腕をそのまま引っ張られてそのまま銀時に抱きしめられた。

「…帰るぞ」
「うん」


おかえりと
(ただいま)





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