小説 | ナノ


風が強い。少し風が吹いただけでも体がふらりと揺れる。もう何日ご飯食べてないかな。もう何日家族に会ってないかな。あれ、あたしに家族なんて居た?もうどうでもいいや。

「おなかすいたー」

ごろんと仰向けに寝転がったら銀髪の天パが見えた。なんで居るの。うまく喋れない口を開いて必死に言葉を繋いだ。呂律が回らないほど衰弱したのかあたしは。

「せんせー、じゅぎょーちゅーです」
「そりゃお前もだろうが」
「あたしはいーんですー」

どうせ誰もあたしが居ない事に気付いてなんかない。だってあたし影薄いし友達居ないし。うわあ、悲しいなあ。

「せんせい」
「あ?」
「あたししぬのかなー」
「…かもな」
「あは、つめたい」

先生はそんな人だけども。こんな時まであー空が綺麗だなとかつまらない事しか考えられないあたしはついに頭までおかしくなったのかもしれない。ちなみに今日の天気は曇りである。お昼からは降水確率60%だからほぼ確実に雨だ。

「せんせい」

先生を呼んでみたけど先生は無視してタバコの煙をぷかぷか浮かばせた。いい匂い。

「あたし、しにたい」
「あっそ」
「うん、だからね」
「なんだよまだあんのかよ」
「たすけて」

そう言ったら先生はあたしを抱き締めた。その感覚がなんだか久しぶりで涙が出てきた。こういうときって、どうしたらいいんだっけ。分からないからただ抱きしめられがるまま。

「あのね、あたし、むかしからあいされなくて、だから、なれてたはずなんだけど、」
「……」
「やっぱりかなしい、かなしいよ」

先生の抱き締める力がギュッと強くなった。

「せんせい、あたしのじんせいろくなもんじゃなかったよ」
「今から死ぬみてえなセリフだな」
「うん、しぬ」
「はる」

なんですか、って少しだけ顔を上げて先生をみたら先生が優しく笑った。先生はあたしが欲しいものをたくさんくれるね。

「愛してる」

ああほら、もう先生はなんでこんなに優しいのかな。

「あたしも」



だけど、やっぱり 愛されたかったよ
(愛してくれる人、いました)


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