「銀ちゃんはねー!」
玄関の戸を開く前に聞こえてきた声に手を止めた。どうやらはるが友達を連れ込んでるらしい。
「すっごく冷たいの。眠れないって言ったらうるせえって言って先に寝ちゃうぐらい」
え?なにこれ愚痴?
「それで口も悪いし甘い言葉なんか絶対に言わない様な人」
「えー、そんな人でいいの?」
うるせえよ。
「いいの。銀ちゃんじゃなきゃダメなの」
「そう?まああんたが幸せならいいんだけどさー」
あれ、なんかちょっとときめいた。
「それでねそれでね、あんまり触れたりもしないし無口だしジャンプ読んでばっかで、」
もっといいとこあんだろ。
「でもね、あたしが泣いてたら1番に見つけて抱きしめてくれて、重い荷物を持ってたらさり気なく持ってくれて、あたしが笑ったら一緒に笑ってくれるの」
「…いい彼氏だね」
「そうでしょ!?」
あれ、どうしようなんか、
「だからあたしは貧乏でマダオで冷たくて口の悪い銀ちゃんから離れられないの。離れたくないの」
すっげえ、愛しい。
「銀ちゃんはね、この街のヒーローなんだよ」
「はいはい、もうあたし帰るわ。あんたが幸せそうで良かった。」
「うん、ありがとう」
玄関の戸が開いてはるの友達が出てきた。一瞬目を見開いたがすぐにニヤリと笑った。
「お幸せに。はる泣かせないでくださいよ」
「…当たりめーだ」
とりあえずこの靴を脱いだら思いっきり抱き締めてやろうかと思う。
良い男の条件
(完璧じゃない事!)