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はるは無口なのに泣き虫だから何を考えているのか全く分からない。


「団長、書類置いてきますね」
「うんお疲れ様」


そう言ったらぺこりと頭を下げて出て行こうとするはるを呼び止めた。そしたら振り返っていつもの無表情で何も言わない。


「お話、しようよ」
「なんでですか」
「だってはるは自分の事何も話そうとしないじゃない。教えてよ、はるのこと」
「……あたしの事ですか」
「そ」
「まぁ、最低で最悪な人殺し、とでも言いましょうか」
「人を殺した事あるの?はるが?」


人であるはるが人を殺すということは戦争にでも参加してたとでもいうのか。そんな話一度も聞いた事ない。それにはるは人を殺すのを嫌うし戦場さえも嫌う。純粋そのものなのかと思っていた。

だから余計に気になった。どんな理由で何故はるが人を殺したのか。そして誰を殺したのか。


「なんで?」
「分からないんです。分からないんですけど何故か死んでたんです、いつの間にか。」
「誰が?」
「家族がです」


家族を殺すなんてなかなかやるな、なんて思ったけどどうやら訳ありらしい。はるの目から流れるソレを見て察した。はるは時々こうやって泣く事がある。だけど慰めることはしない。

いや、しないんじゃなくて出来ない。はるが泣いていたってはるには触れられない。はるが触れられる事を嫌がるから。言葉だけじゃ無理な事だってある。慰めるなんて事に不慣れな俺だから余計に。


「…はる、じゃあ触れられる事が嫌なのは何で?」
「……消えちゃいそ、なん、です、」
「俺が?」
「みんな、が」


そう言ったはるの顔は見てるこっちが泣きたくなるくらいに寂しそうで辛そうで悲痛な顔だった。

どうすることも出来ない俺ははるを無理矢理抱き締めた。俺ははるに触れられただけで消えるようなやわじゃない。それなのにはるは必死に俺を引き離そうともがく。


「はる、大丈夫だから」
「、だんちょ、っ」


抵抗を辞めておとなしくなったはる。抱きしめる力を少し緩めたらはるが離れたくない、とでも言うように恐る恐る俺の背中に手を回した。


「俺は消えたりしないから」


そんなに怯えないでいいよ。



あなたは触れても消えませんか
(消えないよ)


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