あー、携帯忘れたわ。めんどくせえけど無いと困るし取りに行くか。ほんとめんどくせえけど。
携帯が無い事に今更気付いた俺は真っ暗な廊下を歩いて教室に向かった。歩いてるうちに見えてきた教室からは明かりが漏れてて消し忘れかー、なんて軽く思いながら近付いたらそれが消し忘れじゃないことが分かった。
ガタン、と音がした。誰かいるのか、と少しだけ教室を覗いて見た。
「おきた、」
その相手はどうやら俺に気付いてないらしく机に伏せたまま俺の名前を呟いた。
ていうかあれ。俺の席に座ってるじゃねえか。痛いファンか?とも思ったがそいつの顔を見てそんな考えが馬鹿らしく思えた。
ああー、やばい。どれくらいやばいかっつーとまじやばいぐらい。
可愛すぎるんでさァ、はる。
はるはファンとかじゃなくて普通にクラスメイト。ただ絶望的に仲が悪い。会えばすぐ喧嘩だ。表では、だけど。はるが俺に気があるのはなんとなく分かってた。
ただ、こうして事実を目の前にすると可愛くてたまらねえ。
「……はる」
「、っ!?」
「なんでィ、そのぶっさいくなツラ」
「ぁ、う、うるさい!」
焦りながらも反論するはるは涙目で。
「ね、沖田さ、さっきの見たり〜、」
「ああバッチリ」
「っあ、あれはね!そのなんていうかたまたまそこに沖田の机があったから、座ったっていうかー、そのー、」
そこまで言ってはるは諦めたようにため息を吐いた。
「…沖田」
「……」
「すき」
「俺もでィ」
そう言ったらはるは固まった。そしてこっちに目を向けて目を見開いた。
「…」
「なに黙ってんでさァ」
「だだだだって、」
「ま、まずは名前で呼ぶとこから始めてくだせェ」
それだけ言って携帯を取って教室を出ようとしたら後ろから聞こえた声にたまらなくなって抱きしめた。
「そうご、一緒に、帰らない?」
ベタな展開
(そんなのも、ありですねィ)