小説 | ナノ


家族なんかそれっぽっちのものだ。繋がりなんか言葉でしかなくて所詮は人間同士の馴れ初め。これだから嫌いだ。


「だん、ちょ、」
「泣かないでよ。どうしたらいいか、俺には分からない」


そんな事を言いながらも強く抱きしめてくれる団長が暖かかった。

団長は単純で言いたい事はスパスパ言って嫌いな人とむりに関わったりなんかしない。つまりは頭のいい人なのだ。いや、この場合は夜兎、とでもいうべきか。なんにしろ、団長は心地が良いんだ。家族なんかより団長の方がよっぽど家族らしい。


「ねえったら。どうしたのさ」


少しだけ悲しそうな声を出す団長になんだか申し訳なくなって全部を話したら団長はいつもみたいに笑った。あ、怒ってる。あたしのために、怒ってる。


「もう、家に、っか、えりたくな、い、っ」
「…ここに居ればいい。」
「でも、あた、し、は、」
「君には強さなんか求めてないから。だから春雨に居るといいよ」
「っ、ぐ、だんちょ、っだんちょ、ぅ、」


団長はそれきり何も言わなかった。だけど強く抱きしめて、震えるあたしの手を握ってくれた。



それきり会話はなかった。きみの手が温かかった。
(君は俺が護るよ)


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テーマ「人外ファンタジー」
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