小説 | ナノ


「で、なんで俺のとこに来るんだよ」

「だって先生しか頼れる人居ないし、」

「…寂しいヤツだな」

「うるさいバカ」


銀八先生はあたしが沖田くんの事が好きな事を知っている。だから何度か相談にものってもらった。


「先生あたしもうやめる〜」

「ふーん。お前がいいならいいんじゃねえの」

「…うん、」


本当は良くないけどね。

沖田くんには好きな人が居るんだからそうするしかないじゃん。


「なぁはる」


考え事をしていた顔をあげたら銀八先生の顔が思った以上に近くて反射的に後ずさる。


「ぎ、ぎんぱちせんせ?」

「俺にしとけよ」

「…え、え、」

「好きだ、はる。弱ってるところに漬け込むみたいで悪りぃけど、そうでもしねえと振り向いてくんねえから、お前」

「あ、あの、冗談だよね?」

「ああ、本気だぜ?」

「…っ、えっと、」

「はる」


色っぽい声に呼ばれて胸が高鳴る。ああやばい持ってかれる。

先生はもともと顔も整ってるから尚更ドキドキする。

そしてついにあたしの背中は壁にトン、と当たった。それでも歩みを止めない先生。

そうすると必然的に至近距離になるわけで。


「せ、んせ、」

「悪りぃはる」


そう言って先生はあたしに口付けた。

わざとらしく音をならす先生。これが大人のキス、ってやつだろうか。

いやらしい音が誰も居ない教室に響いた。


「ん、っぎ、ぁ、」


そしてあろう事か教室のドアが開く音がした。

先生は別に驚く事もせずにゆっくりと唇をはなしてドアに顔を向けた。


「なんだ沖田くんか」

「何、してんでィ」

「何って、ナニ?」

「ふざけんな」

「何きれてんだよ。お前には神楽が居んだろーが」

「…はる、来なせェ」

「え、あたし?」


いきなり話を振られてあたふたしていると沖田くんがあたしの腕を引いた。

それから迷う事なくあたしの唇を塞いだ。


「こいつは俺のでィ」

「は?ふざけんな誰が渡すかよ」


沖田くんとは逆の腕を引かれてグラリと体が揺れる。


「ちょ、ちょ、ままままって!」

「はる、俺がチャイナの事が好きって勘違いは辞めてくれやせんか、気色悪りぃ」

「え、でも好きな人程いじめたくなるって、」

「ああ、だからおまえをいじめてたじゃねぇか」

「…は?」

「俺がチャイナと戯れる度に悲しそうに歪む顔を見んのが楽しかったんでィ」


思考回路が全停止した。

つまり沖田くんはあたしが沖田くんの事を好きって、知ってたって事か。


「はる、そんなサド野郎より俺にしとけよ」

「ふざけんな、あいつは俺のでさァ」


2人で言い合うのを見てどうする事もできないあたしはただ見ているだけだったが、2人が突然こっちを向いた。


「で、お前はどっちにすんの?」


前のあたしならたぶん迷わず沖田くんって答えたけど、どうやらあたしは先生の毒牙にやられたみたいで。



王子様が2人
(ああどうしよう、選べない)



※長編に発展させるかもです


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