「おかえり、銀時」
「ああ」
あたしには付き合って暫く経つ彼氏が居た。その彼氏というのも銀魂という漫画の主人公、坂田銀時である。
いつの日か、いきなり現れた。いや、ここは大江戸だからあたしが現れたのかもしれない。
なんにしろ、今幸せである事に間違いはない。
筈だったのに。
「お前も、俺も、夢を見てるんだ」
「ここは夢の中だ。俺とお前は付き合ってなんかない。」
「付き合ってるって夢を、見てただけなんだ」
銀時がそんな事を言い出した。
驚くかって?そんなわけないでしょ。夢か現実かの区別なんかつくに決まってる。嫌でも目は覚めるんだから。
それでもあたしは夢の中だという事を自分に隠して銀時と付き合っていたかった。
「あたし知ってたよ、銀時」
「…まぁ、そうだよな」
「そうだよ。バカだなぁ、銀時は。」
「うるせぇよバカ。」
「ねぇ銀時」
「なんだ」
「終わり、だね」
お互いが夢だと確認し合った時、その夢は途切れる。
毎日毎日たまたま銀時と付き合ってる夢を見れてた訳じゃない。一種の夢を見る方法を使ったんだ。
でもそれが相手に気付かれてしまっては終わり、らしくて。何で気付いたの、銀時。
「まだ一緒にいたかったのに」
「ワリィ。でもこのままじゃ俺もお前も辛いだけだろ」
「…うん、ごめんね」
「謝るなって」
「銀時に、会いたいなあ」
「夢の中で充分会ったろ」
「それは会ったって言わないよ」
そう言ってクスリと笑えば銀時も同じように笑った。
「でもよはる。」
「ん?」
「夢だろうと何だろうと俺がお前の事、その、まぁ、愛してた、っつーのはよ、本当だから」
「…うん、あたしも」
「だからよ、こっちに来いよはる」
そう言って悲しそうに笑った銀時を見て泣きたくなった。
ゆめのなか
(さようならまたいつか)
(待ってるからいつか会いに来いよ)