小説 | ナノ


あたしには好きな人が居て好きな人には好きな人が居て。

目の前で茶髪を揺らしながら神楽ちゃんと戯れる沖田くんを見て笑みが零れた。それと同時に真っ黒でモヤモヤとした感情が渦巻いた。

この感情の名前はよく知ってる。嫉妬、だ。


「またお前アルかァァァァ!返せ!あたしのタコ様ウインナー返せ!」

「もう腹ん中でィ」


そう言って除けた沖田くんに神楽ちゃんは更に顔を赤くして怒り出した。

沸騰してしまうんじゃないかというぐらいにカンカンだ。


「神楽ちゃん落ち着いて、あたしのあげるから。」


ちょうど今日はタコさんウインナー入ってたんだよね。


「ほんとアルか!?ありがとなはる!」

「うん。二つとも貰っていいよ」

「はる大好きアル!あたしの卵焼き一個だけあげるネ!」

「わ、ありがとう」


美味しそうな卵焼きが弁当に仲間入りしたところであたしも弁当に箸をつけた。

神楽ちゃんは沖田くんにまた取られるからとかで何処かに行ってしまった。

ちなみにあたしは沖田くんと話した事はあまりない。


「はるはチャイナに甘すぎるんでィ」

「あはは、そんな事ないよ」

「いや、ありやす」

「沖田くんが意地悪なだけだよ」


そう戯けて見せたら沖田くんもニヤリと良い笑顔とは言い難い笑顔で笑った。


「好きな奴ほどいじめたいってヤツでさァ」


そう言った沖田くんにあたしは笑顔を貼り付ける事しか出来なかった。



小さな小さな事だけど
(あたしには大きな大きな事なんです)


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