「ねえ小太郎、どうしても、行っちゃうの?」
「もう決めた事だ」
攘夷戦争に参戦すると告げられた昨日。ここを出ると言われた今日。
そんなの、行かないでもいいじゃたい。小太郎が行かなくたって戦ってくれる人はたくさんいるじゃん。
「いやだよ、行かないで」
「…すまない、はる」
「いかないでよ、」
「泣くな。はる、おれは必ず帰ってくる」
「い、や、いかないで、」
駄々をこねて泣くあたしを小太郎は困ったように見つめた。
それで優しく抱きしめてくれた。
「…さよならじゃない。必ずまた会えるさ」
「ほ、ほんと、に?」
「ああ。約束だ」
「ま、ってる、から」
そう言ったら小太郎は優しく微笑んだ。それとは反対に抱きしめる力が強まった。
それからするりと腕がほどけた。
「いってらっしゃい」
「ああ、いってくる」
きっと、絶対会えるよね。
行かないで
(おかえりなさい)
(待たせたな、はる)