小説 | ナノ

「ぎんとき?」


朝起きたら誰も居なかった。銀時はいつもそうだ。あたしに何も言わないで、当たり前の様に出て行く。

あたしは行かなくて当然のように。神楽ちゃんと新八くんだけを連れて。

朝たまたま早く起きて「早く準備しろー」だとか「そろそろ行くぞ」って銀時が言ってるのを見て、あたしのこと誘わないかな誘わないかな、ってちょっとだけ期待してた。

だけど銀時は何も言わない。あたしには目もくれない。あたしがこの場に居ないんじゃないかと思う程だ。

いってきますさえも言わない銀時。なんであたしはいつも置いてけぼりなの?

あたしだって、寂しいんだよ?


「ぎんっときぃ…っふっ…うっ…おいてかないでよ…っ」


泣いてもないても帰ってくるはずがない。泣くだけなんて無意味だもの。

それでも何もしようとしないあたしは弱虫。

もしかしたらあたしはここにいちゃダメなのかもしれない。攘夷戦争後、あたしが銀時に着いて来たのは間違いだったのかもしれない。

小太郎とか、晋助とか、辰馬とかに着いて行けばよかったのかもしれない。


でもあたしは攘夷活動する気なんかない。晋助なんか銀時の敵だ。絶対に行きたくない。

それならいっそ遠い宇宙に、辰馬のところに行ってしまおうか。辰馬はあたしのこと1番に理解してくれた。あたしのこと何でも知ってくれた。

あたしが好きな食べ物も嫌いな食べ物も、寂しがり屋だってことも、全部、全部辰馬はわかってた。

それでもあたしは銀時が好きで、銀時に着いて来た。銀時も笑って歓迎してくれた。

それなのに、なんで銀時はあたしをひとりぼっちにするの?


「もうここには居られないよ」


銀時がいつも座ってるところの机の上にある電話で番号を回した。


「辰馬、迎えに…来て」


辰馬は無駄な事は何も言わずに分かった、とだけ言った。

辰馬はあたしのこと分かってるから、無駄な事は言わなかったんだ。

あたしが泣いてるって、分かったのかな。

辰馬となら、泣かずに済む気がする。


そうだ、最初からこうしてればよかったんだね。


ばいばい、銀時。



(はる、久しぶりじゃのう!)
(そうだね!)
(それじゃあ行くぜよ、宇宙に)


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