小説 | ナノ

それからと言うもの、ほんとに一言も交わしてない。謝らなきゃ謝らなきゃ、って思ってるのに何も言えない。

友達ともギクシャクして。最悪だあたし。

これ以上お妙さんが相談にのってくれるけど、迷惑かけられない。


「お妙さんあたしもう、やめたい、」

「はるちゃん……だめよ」

「だっ、てあたし、も、むりだよ…っ」

「そうね。だってはるちゃん何もしてないもの」

「う、だっ、て」

「まずは何かやってみることが大事よ。大丈夫、あたしがいるわ」


そう言ってあたしを抱きしめて頭を撫でてくれるお妙さん。あたしもお妙さんみたいになりたいなあ。

お妙さんから元気をもらって少し勇気が出た。


「お妙さん、あたしがんばる」


がんばって、って言って綺麗に笑ったお妙さん。どれだけ救われたか分からない。お妙さんにはほんとに感謝してる。

そして教室から出て銀時が居そうな所を探して見た。

でもどこにもいなくて諦めかけたとき、前に銀時が歩いてんのが見えた。心臓がうるさい。

まずは、何て言ったらいいかな、とかあれこれ考えてるうちに銀時が遠ざかって行く。とりあえず止めなきゃ。


「ぎ、ぎんとき!」


きゅっ、と廊下がなった。銀時が、止まってくれた。

でも振り返ってあたしの顔を見た途端驚いた顔をして、また前を向き直して歩きだした。

無視、された。それもそうだ、あたしから話しかけないでって言ったんだもん。でも、言わなきゃ。


「まって、銀時!ぎ、んときっ」


走って腕を捕まえた。だけどすぐに振り払われてしまった。これは、つらい。


「何だよ。話しかんなっつったろ」

「…っごめ、ごめん、これで最後にする、から…きいてほしいの、っ」

「…早く済ませろ」


泣きじゃくりながら言うんじゃ銀時もめんどくさいだろうな。だからあたしは涙を乱暴に袖で拭って嗚咽を抑えた。


「あ、あたしね、ほんとはあのときものすごくヤキモチ妬いて、思ってない事言っちゃって、嫌いなんかじゃない、から、ほんとはずっとずっと銀時が大好きで、だから、ごめんね、」

やっぱり零れてきた涙をごしごしごしごし拭ってそれだけだから、って言ってその場を去ろうとしたら、ガシッて腕を掴まれた。


「待てって、はる」

「ぎ、ぎんとき?」

「…ごめん。」

「へ?」

「お前が俺の事嫌いなんだと思って、イライラしてた」

「え、あの、」

「俺も、お前ん事好きだから」

「…う、そだぁ」


銀時があたしのこと好きなわけない。ないない。


「んな嘘つくかよ」

「だ、だって、そんなわけ、ゆ、夢だ、これは夢に違いない」

「……」


信じないあたしに銀時が黙り込んだ。そうだ、これは夢なのだ。

リアルな夢だなあ、とか思ってたら視界が反転して壁に押し付けられてた。あれ、夢なのに、痛い。


「夢じゃねえよ」


そう言った銀時の顔がやけに近くて、心臓がどきどきうるさい。あれ、夢じゃないなら何なんだろう。

そんなことをあれこれ考えてると、唇に柔らかい何かが触れた。その何かとは言わずとも分かる、銀時の唇。

目を見開くあたしの視界に広がる銀時の顔。

これは夢じゃない、現実だ。


「ん…っ……ぎ、ん…っふぁ…」


長い長いキスが終わって、唇が離れて、今度は抱きしめられた。


「銀時?」

「はるにこんな事したいって、ずっと思ってた」

「…っ」

「好きだぜ、はる」

「あ、あたしも銀時好き、好きだよっうぅっ」

「泣くなって」


銀時の指があたしの頬を拭った。

夢みたいな、ほんとの話。


(お友達とも仲直り出来ました)



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