目の前でイチャイチャイチャイチャしてるのはあたしの想い人である坂田銀時と友達。
2人は別に付き合ってる訳じゃないけど、こんなの見せられてイライラしないわけない。
2人して笑い合う。あたしなんかに目もくれず。あたしに向けられる事のないその笑顔を見てなんか悲しくなった。
「何言ってんだおめぇ!」
「いやいや、ほんとなんだって、だってね…」
ああもうイライラする腹立つ。
「はる」
「小太郎、」
「何をイライラしているんだ」
「んーん、なんでもないよ」
そう言ってニコッと笑って見せたら小太郎はそうか、って言って微笑んでくれた。
「話せる事なら何でも話せ」
「うん、ありがとう」
あたしの頭を撫でて教室から出て行った小太郎に和んで頬が緩む。なんだか銀時たちのことで怒ってたのがバカらしく思えるほど。
再び2人に視線を向けるがさっきみたいにイライラはしない、かも。小太郎パワーだ、なんて思いながらふふっと笑った。
でも銀時が友達の頭を撫でて、それを見たらまたイライラが発動してしまった。さっき小太郎にされたことを銀時があたしじゃない女の子にやってる。
あたしの中のドス黒い感情が広がる。銀時も友達も悪くない。あたしの勝手な気持ち。
イライラして銀時たちを見ないようにしてたら、話しかけられた。
「はる?なにイライラしてんだよ」
やめて話しかけないで。今、今話しかけられたらあたし、ひどいこと言っちゃう。
「イライラしてないよ」
「してんだろさっきから俺の事怖ぇ目で見てたろ」
「してない見てない!」
「してんだろ」
「してないってば!なに?あたしが銀時にヤキモチでも妬いてると思ったの?」
「誰もんなこと言ってねえだろうが」
「そうだよね、だってそんなわけないもん。あたし銀時嫌いだし」
ああ、もう。止まって、止まってよ。こんな事が言いたいわけじゃないのに。
なんで、なんで止まらないのよ馬鹿野郎
「どうしたんだよお前、ちょっと落ち着け」
「落ち着いてるよ!もううるさい!さっきみたいに2人でなかよく話してればいいじゃん!」
「はる、」
「…いっそ付き合っちゃえばいいじゃん!銀時好きなんでしょ?よかったね!あんたも銀時に近付くために銀時と仲のいいあたしに近付いたんでしょ?ほら、両思いじゃん!」
「はる!」
「まああたしに関係ないけどね!あたし銀時大嫌いだし?銀時見てるだけでイライラするから話しかけないでよね」
あれ、あたし今、なんて言った?
「……そうかよ」
「っあ、ぎんと、」
「そっちこそ1人でイライラしてうぜえ。もう絶対ェ話しかけんなよ」
「っい、言われなくた、って…!」
銀時にそんな事言われるなんて思ってなくて、思ったよりショックが大きい。
もうあたしの事なんか見てなくて、前に向き直ってる銀時を見て悲しくなった。自分から言ったことだけど、悲しくて。
我慢出来なくなって廊下に出て、走って走って、非常階段に座り込んだ。
銀時に対しちゃ、あたしの存在なんかそんなもんなんだって、知ってたけど、改めて思い知らせられると辛い。
だけど全部、あたしのせい。
(謝る事もできない馬鹿なあたし)