■ 王子とフォークダンス
"今週フォークダンスとやらをやる"
風間先輩が言った言葉にその場が騒然とした。まぁそうなるよね。ここ男ばっかの男所帯ですもんね。男同士でフォークダンスなんてしろって言われたら無理だよね。
でも風間先輩は"俺は男とは踊らん"そう言った。つまり風間先輩はあたしか千鶴ちゃんのどちらかと踊る訳だ。あたしは大歓迎でぃす。
いや、でも沖田先輩が他の女の子(千鶴ちゃん)と踊ってるなんてちょっと妬ける。千鶴ちゃんだから全然構わないけど。
そしてその日の昼休み、風間先輩に生徒会室に来る様に言われた。
「はる、行こうぜー」
平ちゃんがお弁当誘ってくれたけど断っておいた。沖田先輩と食べれないのは少し悔しい。
「明日は一緒に食べようね!」
『勿論だよえんじぇるちゃん!』
千鶴ちゃんと一言二言交わして別れた。
『風間せんぷぁーい』
「なんつー声出してんだよ」
『匡ちゃん!』
「お前生徒会入ってんだから生徒会室ぐらい自由に出入りして構わないんだぜ?いちいちインターホンみたいな事しないでよー」
『でも妙に緊張するんだもん』
「何でだよ。早く入れ」
『風間先輩また寝てる』
「毎度の事だろ。天霧が起こしてくれんだろ。じゃ、俺用あっから」
『え、ちょ、匡ちゃん!』
あたしの叫びも虚しく匡ちゃんは出て行った。天霧先輩がいただけまだマシ。
『天霧先輩、』
「あぁ、すみません。今起こしますので。」
『あ、ありがとうございます』
「いえ、そんな堅苦しい事言わないで下さい。」
天霧先輩はあたしに目を向けながら荒々しく風間先輩を揺らした。大丈夫かな、風間先輩。
「……」
『おはようございます』
「…ああ」
『で、あの、用って…?』
「放課後でも良かったんだがな、他に取られる前に言っておこうと思ってな。ふぉーくだんす、一緒に踊るぞ。」
『…What?』
「二度は言わん。分かったら返事しろ」
『あたしでよろしいのでしょうか…?』
「だからさっきから言っているだろう」
『ぜ、是非いいいい!』
「ふん」
でも沖田先輩も惜しい!いやまてよ、そもそもフォークダンスって色んな人と踊るもんでしょ?もしかしたら沖田先輩とも踊れるんじゃね?
『風間先輩、フォークダンスって一人だけと踊るんですか?』
「当たり前だ。」
そうか、残念。沖田先輩とはまた今踊っちゃえばいいよ!そうだよ!にやにや
放課後、あたしは剣道部にお邪魔した。鼻血が危ない。
「はるちゃんじゃねぇか、どうしたんだよ」
『新八先生、沖田先輩は?』
「ああ、総司なら千鶴とそこのコンビニに行ったぜ。何でもドリンクが切れてるみてぇでよ。」
『まじすか。じゃあこっちで待ってていい?』
「ああ、構わねぇぜ。」
それから沖田先輩が来るまで剣道を見学させていただいたんだけど、迫力がすごい。
新八先生と一先輩がすごかった。両者一歩も譲らないって感じで。一先輩あんな華奢な体でよく新八さんの剣止められるなぁ。かっこいいー!
『一先輩、今のもう一回!』
「あ、ああ…」
『あたしもやりたい!』
「…握ってみるか?」
『いいんですか?!』
「ああ。俺も剣道に興味を持ってくれたなら嬉しいしな。」
『じゃあやりたいです!』
一先輩に剣道をやりたいっていったら本気になって教えてくれた。そりゃもう何から何まで。
後ろから抱き着く様な形であたしの手を握って(正確には竹刀を)あたしが分かりやすいように基礎から。案外難しいな。
その時沖田先輩と千鶴ちゃんが帰ってきた。のにも気付かずに竹刀に夢中になってしまった。いや、もう楽しい。
「もう少し背筋を伸ばした方がいい。」
『はーい』
そして休憩になってようやく気付いた。
『沖田先輩!』
「何で居るのさ」
『沖田先輩待ってました!』
「…そう。」
『何かをしにきたんですけど…何だっけ。』
「君ってどこもかしこも抜けまくりだよね」
『いやー、それ程でも…』
「褒めてないけどね。で、君は一くんと何をいちゃいちゃしてたわけ?」
『剣道教えて貰ってた!』
「ふーん。」
おっと沖田先輩不機嫌っすね。今日のとこは引き上げるとしまっか。生徒会の仕事もあるし。
『よし、では!生徒会あるのでさらびらん!』
どたどた走ってまた明日。
(総司さ、妬いただろ)
(僕があの子に妬くわけないでしょ)
(素直じゃないなぁ)
(す、すまん総司。俺とした事があんなにベタベタと…)
(皆凄い勘違いしちゃってるね。)
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