■ LikeかLoveか
あの後沖田先輩は少しだけ歩くスピードを落としてくれた。そしてたどり着いたのが人気のない非常階段。
「君さ」
『はい?』
「土方さんが好きなわけ?」
『え?あ、いや、あの、違います。』
「そう。じゃあ僕が嫌いになった?」
『違います!断じて違います!』
「じゃあ何?」
『はい?』
「最近僕のところに来ないし、土方さんとやけに仲良いし、僕のこと避けるし」
『ち、違います!それは、その、』
千鶴ちゃんと付き合ってる事を知ってしまったから、なんて言えるかぁぁぁぁぁぁ!
でも何も言わないで解放してくれそうにもない。どうしよう。
『…』
「早く言いなよ」
『千鶴ちゃんと付き合ってるんですよね?』
「…は?」
『は?じゃなくてですね、千鶴ちゃんと付き合ってるんですよね?』
そう言うと沖田先輩は笑い始めた。そりゃもうひーひーと。相変わらず失礼だなこの人。そこもまた愛しいのよねー。あいらぶゆー!
あたしが考え込んでいたら沖田先輩が笑うのをやめてあたしを見詰めた。
『な、なんですか』
「ん?勘違いも良いところだな、と思って。」
『か、勘違い?』
「そ。勘違い。」
『…うそん』
「嘘じゃないよ。」
『わ、分かった!あたしを嵌めようとしてるんだな?さぁ、隠しカメラはどこだー?』
「…本当、なんだけど?なんなら証明しようか?」
『え?わっ…!』
一瞬であたしの視界が変わった。見えるのは向こう側の壁と沖田先輩の顔。これはあかん。心臓に悪い。
数秒後、あたしの唇は土方先生同様、奪われた。一日で二回キスするて、あたし大丈夫かいな。
土方先生の時より深いキス。逃れられないように、と押さえられた後頭部、全てが熱い。
あたしの声じゃないような、甘ったるい声が出る。
何秒口を塞がれてただろうか。やっと離された唇。息が出来なかったあたしは必死に空気を吸い込む。
沖田先輩はそんなあたしをしっかりと支えてくれて、不敵に笑って口を開いた。
「僕は、君が好きなんだけど?」
…幻聴だろうか?沖田先輩があたしをすきって、そんな筈がない。そうだ、きっとLikeの方だ。そうに違いない。
『らいくですよね?』
「いや?それ以上」
『まさかの…らぶ?』
「…」
無言で微笑み頷いた沖田先輩。嬉しい筈なのに、涙が出た。いや、嬉し涙か。あたしって以外に涙もろかったんだな。
沖田先輩は泣くあたしを抱きしめてくれた。壊れ物を扱うかの様に、優しく。
「君は、僕のこと好き?」
『好き、に決まってるッじゃないで、すか…!』
「泣きながら言われたら雰囲気ぶち壊しだよね。」
『ごめ、なさいっ』
「謝る事じゃないんだよ。君らしくていいじゃない。」
『あ、りが、とう…ッ』
沖田先輩はあたしの涙を指で拭って、今度は触れるだけの、優しいキスをした。
(ドッキリじゃないよね?)
(なわけないでしょ?なんならもっと証明しようか?)
(結構ですごめんなさい)
(そう?残念。)
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