■ 作戦とは言い難い
ちょっと待った。土方先生はあたしに協力してくれるんだよね?だとしたらこの状況絶対おかしい。
『ひ、ひひひひじかた様!近いかと…!』
「昨日言ったこと忘れたか?」
『…拒否すんなよ。ですよね、分かってます。でも!あの!これは協力というより誤解されてしまうのでは?』
「んな事今は気にすんな。後に分かる事だ。」
『うひょい』
今の状況を詳しく説明するとですね、廊下で普通に土方先生とお話してたんすよ、で、沖田先輩が通ったその時、土方先生が距離を縮めてあたしの頭を撫でてくださった。
いや、緊張したとはいえ普通に嬉しかったし興奮しましたよ。だってこんなイケメンに撫でられたんだから!
『土方先生ー、沖田先輩が睨んでおりますがよろしいのですか!』
「完璧じゃねーか」
『え!もしかしてMなの?』
「ちげーよ。」
『どふふー!じゃ、あたしはそろそろ戻りまーす』
「おー。」
最後にばいばいのハグをして土方先生と別れた。
その近くに、沖田先輩がいた。前のあたしならすぐ沖田先輩に抱き着いたはずだけど、諦めなきゃいけないので我慢我慢。
『…ふー』
沖田先輩の横を過ぎた瞬間ため息が零れた。通り過ぎる間沖田先輩の視線がとってもとっても痛かった。
あたしが来なくなったの気にしてくれてるのかな?って考えて少しだけ嬉しくなった。そんなわけないのに。
『期待させないでよね』
小さく呟いたその言葉は周りの騒音に掻き消された。
その日はずっと憂鬱だった。沖田先輩に会えない事が。まぁそれを言ったら1週間ぐらい憂鬱だけどね。1週間も沖田先輩と話してないのかー。
『土方先生』
「なんだ」
『あたしって醜いですね』
「…んなことねーよ。」
『醜いよ。友達の幸せを喜べないんだから』
「そりゃお前の勘違いだろーが。それに、お前は総司が好きなんだから仕方ねーよ。」
『…土方先生はなんであたしにそんな優しいんですか?』
そう聞いたら土方先生が悲しそうに笑った。でもそのあといつもの無表情に戻り、あたしに迫ってきた。
『土方先生?』
「俺が何でお前に優しいか?」
『…?』
「それはな、お前に惚れてるからだ」
『…何言って…ん!』
あたしが言葉を繋げた時、土方先生があたしの唇を塞いだ。それがキスだという事を理解するのにさほど時間はかからなかった。
初めてのキスに、力が抜けて顔に熱が集まる。
『…やっ……ん…』
息が出来なくてたまらず土方先生の胸を押すけど以外にガッチリしたその体にはそんなこと無意味で。
でも暫くしてから土方先生はハッとしたようにあたしから離れた。
「…わりぃ」
『いえ、あの、気にしないで!』
「いやでも、本当に悪かった!」
『いいってば。ね?』
「いいわけねぇだろ」
『本当にいいんだってば!気にしないで!それよりどっちかっていったら、土方先生のさっきの言葉の方が気になるわ!』
"惚れてる"って、本気なのか。その事に対して質問した時、ドアが勢いよく開かれた。
そしてそこに居たのは沖田先輩。
「…やっぱり来たか」
「土方さん、何のつもりですか?」
「見たまんまだろ」
「僕、前言いましたよね?手出さないでって。」
「ああ言ったな。」
二人がバチバチ音がしそうなぐらい睨み合った後、沖田先輩があたしの腕を取り、そのまま空教室を後にした。
『お、沖田先輩?』
「いいから何も言わないで着いてきて」
『…』
これから何が起こるか、少しも予想していなかった。
(沖田先輩待って!)
(嫌だよ。)
(は、はやいです!足が追いつきません!)
(ああ、そういうことなら別だね。)
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