■ すれ違いて厄介な
あたしってなんてアホなんだろう。
『沖田先輩に会いたいぜべいべ』
「うっせー帰れ」
『匡ちゃんどいひー』
「黙れ」
『…ぶー』
「あー、もう分かったよ。聞いてやるから10文字以内で簡潔に話せ。」
『………失恋してしまった』
「あー、確か沖田っつったか?」
『沖田総司様』
「で、そいつに好きな人がいて、それが仲の良い雪村千鶴、と。」
『素晴らしく簡潔にまとめてくれましたね。』
「諦めるかどうかはお前次第だけどよ、俺の意見としては沖田が本当に雪村が好きなのかハッキリ分かるまでは今のままでいいんじゃねーの?」
『成る程…』
一理ありますな。沖田先輩が千鶴ちゃんのことがすきって分かったわけじゃないしなー。
いや、流されるなあたし。もしかしたらあの二人は両想いであたしは邪魔者、っていう可能性もあるわ!だとしたらあたしは友達とすきな人の恋を邪魔していることになる。
『そんなんやだ!ごめん匡ちゃん、あたし諦める。』
「…ふーん。ま、お前がいいならいんじゃねーの?」
匡ちゃんなりの慰めなのか、軽くぎゅってしてくれた。に、匂いなんか嗅いでないんだからね!
少し元気でたところで生徒会室を後にした。と、ここで大失敗。なんてタイミングの悪い…。
千鶴ちゃんと沖田先輩のイチャイチャシーンが目に入った。沖田先輩が千鶴ちゃんの頭を撫でて、満更でもないような顔をして笑ってる千鶴ちゃん。
友達の幸せは喜ぶ筈なのに苦しいと思ってしまうあたしは醜いのかもしれない。
あたしはこのままどうするべきか。横を素通りするか、後ろにバックで職員室か。
…よし、職員室に避難だ。
『土方せんせー!いますかー』
「職員室で叫ぶんじゃねーようるせぇな。」
『あは』
「…何か、あったか」
『何もないですよ!』
「何もなくて泣くかよ」
『…泣いてません』
「見え透いた嘘吐くな。話ぐらいなら聞いてやれるが?」
『……土方先生好きになればよかった。』
「…お前も酷なこと言うじゃねーか」
土方先生が、悲しそうな、困ったような、そんな顔をした。
『ひ、じかたせんせ?』
「あ?なんでもねーよ」
『本当?』
「人の事気にする前に自分のこと気にしやがれ」
『…』
「話してみろ」
土方先生の声があまりにも優しくて、全てを話した。沖田先輩と千鶴ちゃんのことも、沖田先輩を諦める事も、全部。
そしたら土方先生はそれはねーよって笑った。土方先生は何か分かるのだろうか…。
「協力してやらんこともないぞ?」
『…!』
「今からお前は俺の言うことを聞いてりゃいい。何を言われても拒否すんなよ。このことは原田にも話す。いいな?」
『は、はい』
まさか土方先生が協力してくれるなんてそんなこと思っても居なかったのでびっくりした。
どんな作戦かは何一つ教えてくれなかったけど、期待はしてみる。
(もう土方先生だいすきだよ)
(ああ。)
(いやん、照れちゃってー!)
(調子乗んな)
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