「…壊れちゃった…」


私のお人形。



【たからもの】



壊れちゃった。

私のお人形…チャックが。


「どうしよう…」


これじゃあ戦えない。

縫えばいいけど…


裁縫道具どこかな…


ぺたぺたと僅かに音をたてながら歩く。
ここはハオ達のアジト。


「……」


あれ…


いつものところに裁縫道具が無い…


「……?」


どこにやったのかと考えつつ、キョロキョロとあたりを見回す。

……やっぱり無い。


「…ごめんね…今は直せないみたい」


そう、チャックに話しかける。もちろん返答は無い。
ハオ様達が居るけど…


少し心配。


「裁縫道具が見当たらないだけだから…見つかったら直す…」
「そだね!」


マッチは満面に笑みを浮かべて言った。

いつもの、仲間との他愛ない会話…


でも


チャックがいないだけで随分と違う世界に思えた。







「もうあるかな…」


夜になって、チャックを置いた部屋へと向かう。

さすがにもうあるはず…


そう思いながら、最初と同じく、ぺたぺたと音をたてながら部屋へはいる。

するとそこには、



「………ハオ様?」


そこにはマリ達を統率している人物、ハオが居た。


チャックを抱えて。


「あぁ、おかえり。チャック直しておいたよ」


綺麗に微笑みながら、はい、とチャックを手渡すハオ。

マリは唖然としていた。


「…あれ?僕が直したらまずかったかな」


そう訊ねるハオの言葉に我に帰り、

慌てて首を横へ振る。


「…びっくりした、だけ…」


だって


ハオ様が直してるなんて


思ってなかったから。


「ふふ、そんなに珍しかったかな?」


くす、と笑むハオ。


マリの頭に
ぽすっ、と手を乗せる。


「大事なものなんだろ?」




大事なもの…



たいせつな、もの?



チャックは私の…


たからもの。



「…ありがとう、ございます…」



やさしいハオ様、


私のたからものに…気を使ってくれた。



嬉しい…



やっぱりハオ様は


優しいひと………








チャックは私の

たからもの。



私はハオ様の


たからものに


なりたい、な…



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あとがき