走る。
同じ鼓動目指して。
ただ、
逢いたくて。
我が儘になった俺は、
その温もりが無いと
駄目なんだ。
何処を探しても、その姿を見つける事は叶わなくて、それでも俺は走った。
一日俺の為に時間をくれた仲間の為にも、俺の為にも、見つける迄は帰れない。
近くに居る。
そう感じて走り出したのに、見つけられない。
自分の不甲斐なさに苛々しながら走った。
「何処に居るんだよ」
それとも、とうとうイカレてきたのか、感じたものはただの勘違いか。
繋げられない回線を繋ごうとするよりは、思ったものを信じた方が確実。
だから俺は、走った。
「アッシュ…っ」
近くなる感覚に、握った拳に更に力を入れた。
もう直ぐ、逢える。
「うぁっ!」
アッシュに逢えそうな予感で一杯になって前を見ていなかった俺は人にぶつかり、その反動でよろけてしまう。
でも、身体が地につく事は無く、背中に支えが与えられて目を開けた。
「レプリカ」
俺を呼ぶ、俺の大好きなアッシュの声。
「──アッシュっ!!」
支えられた状態から思いきり飛びついて、しっかりとその感触を確かめる。
変わらないその感触に、走った疲労なんて消え失せたように喜びで満たされる。
「アッシュ…」
「何だ」
「漸く逢えた……本物だ…」
ぎゅうと力の限り抱き締める。
それに応えてくれたのか、アッシュも同じように抱き締め返してくれて、俺は出来る限りアッシュに擦り寄った。
「ずっと探してたんだ」
「そんな気はした」
「逢いたかった」
「分かってる」
ぶっきらぼうな返事も愛しく思う。
「抱き締めて欲しかった」
「今やってるだろう」
「ずっとアッシュに触りたくて、触って欲しくて…」
町中で抱き合う俺達をみんなが見ていく。
そんな視線は全く気にならなかった。
「俺アッシュが居ないと駄目だ」
「甘ったれが」
「だってアッシュが大好きだから…一人は嫌だよ」
逢えなくて寂しかった思いは全部幸せに変わった。
ただ抱きしめられるだけで、それだけで俺って幸せ者だって思う。
アッシュが居るから幸せ。
「今日は離さねぇから」
「いつもだろ」
「嬉しい?」
アッシュから離れて手を繋ぐ。
二人で一歩を踏み出す。
「束縛する方が好きなんだが」
「俺は…される方が好き…かも」
宿に向かう道のりが長く感じて、少しでも早く着くように歩を進めた。
離れると、君の大切さがよく分かる。
そんな一日。
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