甘い甘い一時を。

君と二人で過ごしましょう。





「アッシュー、あれ買って」
「自分で買え」
「パパー、あれ買って」
「死んでこい」

店内のお菓子コーナーでの二人のやり取り。
アッシュに菓子を強請るも、ルークの望みは叶えて貰えず。
結局、自分で購入したルークは、先に店を出たアッシュに続いた。



「何を買ったんだ」

広場で座り、先程買った袋を開けるルークに問うと、満面の笑みを向けてそれを取り出すとアッシュに見せた。

「こーれ」

小さな箱一つ。
普段あまり菓子を買う事の無いアッシュには、それを見せられても検討もつかず。
見ると、細長い棒状の菓子にチョコがコーティングされたような菓子のパッケージ。

「これが何だ?」
「アッシュと食べようかと思って」

アッシュは眉を顰めてそれを見た。

「断る」
「却下」

音を発てて開いた箱、その中から袋を一つ取り出すとそれを開けて、ルークは菓子を一本取り出した。

「はい」

それをアッシュに差し出すが、アッシュは一向に受け取ろうとしない。

「いいから食え」

ほら、と無理に手渡ししてからルークはもう一本、自分の分を取り出した。

「はい」

それをアッシュに差し出すが、アッシュは一向に受け取ろうとしない。

「いいから食え」

ほら、と無理に手渡ししてからルークはもう一本、自分の分を取り出した。
食べなければ口に押し込まれそうだと感じたアッシュは、渋々それを口にした。
そしてアッシュは、渋々それを口にした。
そしてアッシュは、にんまりと笑ったルークを見、嫌な予感を察した。

ぱく。

「?!」

銜えている形だったそれにルークがパクリと食いついて、その分を貰っていった。

「なっ、何しやがるこの屑が!!」

慌てふためいて、菓子を食すのも忘れて怒鳴り散らすアッシュに、ルークは平然とした顔をしてポリポリと菓子を食す。

「だってこれがやりたかっただけだし」

にんまり。してやったりと言った顔でアッシュに笑いかける。
アッシュは今にも剣を抜きそうな形相で、ルークの頭を思い切り叩いた。

「いってー!! 何すんだよっ!」
「何すんだじゃねぇんだよ! 屑!!そんな事やらせるんじゃねぇ!!」
「えー」

余程恥ずかしかったのだろうか、耳まで真っ赤になるツンデレ。
そんなアッシュの首に腕を回し、ルークはアッシュの瞳を見つめた。

「これ恋人同士でやる事なんだぞ?」
「? そうなのか…?」

眉を寄せて訝しがるアッシュに、まんまと騙されたと内心笑いながらそうそうと頷くルーク。
二人の間に置いたままの箱からまた一本抜き、口に銜えてアッシュに促す。
嫌だと顔を背けるアッシュの顔を戻し、口に菓子先を当てる。

「……」

アッシュは仕方無しに口を開け、それに食いついた。
視線を菓子からルークにやれば、嬉しそうに笑う表情のルークが居た。

(……アホくせぇ…)

我ながらアホだと内心に浮かべながら、アッシュが一口食べ終わろうとすると、それよりも早くルークが食べ進んでくるのが解った。

(……まさかな…)

そのまさかだった。

ちゅ。

食べ進んできたルークの唇がアッシュのそれに触れた。

(やっぱりアホだったか)

予想通りの行動に最早溜め息も出ない。

「アッシュと…」

一人頬を赤らめてテレるルークに呆れながら、アッシュは一本菓子を食した。

「あっ!」

すかさずパクリと食いつくルーク、そしてもう一度キス。

(怒る気も失せるな…)

嬉々として一人幸せルークの顔を覗き、アッシュは諦めたように青空を見上げた。

「アッシュ、アッシュ」

名を呼ばれてルークを見やると、再び菓子を手にしているのを見た。

「もう一回」

頬を赤らめさせ指を立てて強請るルークの姿に、アッシュは自分から菓子を口にした。

「……ん…」

目が合うと、はにかんだ笑みをルークは浮かべ、アッシュも分かり辛いが笑みを作った。




「……どんなカップルがあれをやるって言うんだ?」
「さぁ? バカップルだからいいんじゃなーい? 恋人同士ってのも初耳ぃ」
「そうですねー、それに、あそこだけ気温が高い気がしますねぇ」

遠巻きに赤毛達を見ていた仲間達。

「幸せそうですわね……」
「……気にしたら、駄目よ」

約、二名。複雑そうな気分でそれを見ていたのも居たそうな。





甘い甘い一時。

君と二人なら、周りの事なんて気にしない。



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