思う事を始めたのはいつからだったか。

「…ん…」

あんなにも憎くて仕方がなかったのに。

「もう一回…」
「何度目の台詞だ?」
「良いだろ…?」

こうして口付けを交わす。

飽きる事もなく、互いを貪る。

「……短い」
「ならどうすりゃ良いんだ?」
「もっとして欲しい…」

人の上に跨りキスを強請るなんて馬鹿げてると思うが、それも案外悪くない。

何を思ってこうしているのか、考えるのも面倒になる。

「アッシュのくれるキス、好きなんだ」
「何言ってやがる」

言葉と共に唇を寄せれば、甘ったるい声を堪える事なく漏らして、髪に指を絡ませる。

腰を引いて、短くなった髪に触れる。

柔らかな髪に指が絡まる事はなく遊んでいると、催促するように背中を抱き寄せられた。

「甘ったれだな」
「いいだろ…してくんねぇと押し倒す」
「やれる訳もねぇのに、下らねぇ事ぬかすな」

一心に見つめる瞳に自分の姿が映る。

それが次第に大きくなり、反動で身体がベッドへと倒れ込む。

勝ち誇ったような表情をして、一言。

「これくらい、出来るんだぞ」

妙な所で張り合う事が好きなのは、同じらしい。

「誘ってんのか?」

冗談混じりに言ってやれば、曖昧に笑って再び口付けを始める。

誘うような、甘えるキスを。


「馬鹿が」
「ん…」

こんな時間も、悪くない。



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