温かいその手に触れたら、なんとなく気持ちが伝わってきた気がして。

今ある幸せだけで、目の前がいっぱいなんだ。







「ったく何で俺1人で買い出しなんか…」

街についたルーク達一行は、各自役割を決めてからの自由行動とした。 文句のでないようにとクジで決めたのに、一番面倒な物を引き当ててしまい調度ルークが小言を言っていたところだった。

戦闘続きで随分と消費したグミや食材の袋で両手はいっぱいだった。

「しっかし重い…」

前はもはや見えない状態で、転けたら大惨事になる事間違いないだろう。

「アッシュ〜とか呼んだら手伝いに来てくれやいいのに〜」
「呼んだか」
「!!!?」

ひょっこりと現れた見慣れた人物に、ルークはつい持っていた荷物を落としそうになった。

「…いたのかよ」
「調度な、偶然だ」
(嘘くさー…)
「持ってやる」

アッシュはルークの荷物を全部持ってやると顎で合図をして歩き出した。

「あ、そんな全部持たなくても…!!」
「いいから行くぞ」
「………そっちじゃないんだけど…」
「………」

一度だけ咳払いをして、アッシュは向きを変えた。
こうして2人で歩く事が珍しくて、しかもほのぼのと買い物帰りのようなこの気分。
どちらも悪い気はしなかった。

「……」
「何だ」
「いや、お前が荷物を持ってくれるとは思わなくて…意外だなって」
「………」


冗談気味に呼んだだけなのに、来てくれるなんて思わなかった。

嬉しさを隠しきれない。


「こんな荷物も持てない程ひ弱だったとはな、とんだお笑い草だ」
「ちょっと重かっただけだっつの!!」
「そうか、まぁいいけどな」

どこか嬉しそうなアッシュの顔をルークは見逃さず、にこりと笑った。

一緒に進む道のりに、同じ歩幅に、また笑みが零れる。


「また呼んだら来てくれる?」

「すぐにでも来てやるよ」


不器用な言葉が優しくて。


こんな小さな出来事が嬉しくて。



さり気なく結んでくれた、2人だけの約束。


「次は荷物なしがいいな」
「?何で?」
「繋げるからな、手」
「あ、そっか、半分持つよ!そしたら繋げる!」

ルークは右手で荷物を取り上げて、アッシュの右手と手を繋いだ。

「……悪くはねぇな」
「だろ?」



微笑むと、返してくれた。



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感想