昼休み。
携帯の振動に気付いた俺は、それを開き、着信したばかりのメールを開いた。

高階だ。

そこには、
『先輩、今日は一緒に帰れません』
とだけ書かれていた。


「…?」


今日、あいつに何か用事でも出来たのだろうか。
何かは知る由もないが、今日は一人で帰らないといけないらしい。


「………」


俺は携帯の画面をぼんやりと見つめた。
“一緒に帰れません”の一文が、ひどく目に付いた。





――放課後。


「はあ…」


午後の授業、全然身が入らなかった。

なんで。
たかが1日、高階と帰れないだけじゃないか。

たかが1日…

否、俺にとっては“されど1日”

今日は朝しか高階に会ってないことになるのだから。


――会いたい。


そればかりが頭を占め、歩が進まない。

いつもの待ち合わせ場所から、進めない。





「せーんぱい。待ってたんですか?」
「!」


少しの間そこに立ったままでいると、突然後ろから声がし、俺はぎょっとして声の方を振り返った。

そこにいるのは、やはり身長のバカでかい彼で。


「高階…」


なんでお前ここに、と、声にならず口をぱくぱくさせた。

それがわかったのか、高階は口を開いた。


「なんでここにいるんだ、とか言いたいんでしょう」
「だってお前、昼休みにメール…」


用事があるのなら、こんな早い時間…もしくは、早く帰宅するならこんな遅い時間にいるはずがない。

しかし俺の表情を楽しむように、高階は朗らかに答えた。


「今日はエイプリルフールですから。」
「……!?」


エイプリルフール。
俗に、嘘をついてもいいとされている日。

高階はにこやかに昇降口を指し、「あそこで先輩を観察してましたv」と言う。

…とどのつまり、俺はこいつに騙されたというわけだ。

それにやっと気付いた俺は、無性に高階が小憎たらしく思えた。


「先輩、寂しかった?」
「さっ…寂しくなんかないッ!!!!」


ホントですかぁ?とニヤニヤする高階。


(なんで俺が高階に振り回されなきゃ…っ)


もう我慢ならなかった。
置いて帰ってやる。

俺はくるっと踵をかえし、無言のまま高階を置き去りに歩いた。


「ああっ!先輩待って!許してくださいよ!」


慌てる高階の声。
いい気味だ。
ちったあその脳細胞の少ない頭で悩め。


許してやるのは、数日後。