僕には、絶対的なものをくれる人なんていない

でも、あなたは違うものをくれるから

もう
偽りのレッテルの中で、無い光を求め続けなくていいんだと

思えるようになったんだ。





きみがくれたもの
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L'amore non ha bisogno
"assoluto"






コンコン。


「帽子屋さん…?」
「……ん…?
あれ、そちらからとは…珍しい」
「ふふ…おはよう」


早朝。
彼がレインズワースの従者という身分になる前の時間に、彼の部屋の外窓へやってきた。
僕が窓をノックした音で起きたらしい彼は、視線だけをこちらへ向けている。

開けて?とねだれば、彼は眠そうな顔をしつつ起き上がり、こちらへ来て窓を開けてくれる。


「早いですネェ…
何か悪い夢でも見ましたカ?」
「ううん?
最近はあなたのおかげでそんな夢は見ないんだ」
「それは嬉しい限りです。
では何故…?」


とりあえず中へどうぞ、と手を伸ばしてくれる。
それに従って手を重ねれば、力強い手に引き上げられる。


窓辺に足をついた僕は、そのまま彼に飛びついた。
驚いた声と、倒れ込む感覚はほぼ同時で。

楽しくてクスクスと笑ってしまう。


「ご機嫌ですネェ」
「うん…あのね?
今日、夢にあなたが出てきたんだ」
「ワタシですか?」


そう。
夢にあなたが居てくれて。
目が覚めたらどうしてもあなたに会いたくなって。
エコーに書き置きをしてまでここへ来てしまった。

こんな朝、僕はすごく嬉しくて仕方がない。


「夢でまでワタシを想ってくれるなんて…
照れるじゃないですカ」
「ふふ…」


だって、僕はあなたが好きなんだ。
あなたは社会が生み出した歪んだ知識を持たずに僕に触れてくる。

存在しない絶対の愛情を求めて痛みを増してく僕を
闇の中からでもあなたは包み込んでくれた。

あなたは絶対的な愛情などくれない。
くれるのは、強くなどないやわらかいもの。
幸せを強く求めすぎた僕に、静かに教えてくれる。

そんなあなたが、僕は好き。


「今度はワタシがアナタの夢を見たいものです」
「見たら…来てくれる…?」
「エエ、喜んで」


ハグのお礼にキスをしますよ、と悪戯っぽく笑う彼に、強く抱きついた。








(どんな夢だったんです?)
(あなたが手品を見せてくれる夢だよ)
(好きですネェ…
フフ、またやってあげますヨ)
(うん、楽しみにしてるよ…)

2009.09.14