「ワタシの勝ちですネ」

その笑みは、至極楽しげだった。




新年早々に
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Solamente come per il danno





三が日。
旧い年から新たな年へ移り、四大公爵家が集まっていた。
元日にも挨拶をしているのだが、その日は他の縁者にも挨拶回りをするため、改めて集まっている。

その中にはもちろん、レインズワースの従者として彼がいるわけで。

ひょこっ、と驚かすように現れた彼は、遊びましょうと言って手品風にそれを出した。

なんでも、はねつきという遊びらしい。


「む、難しいよ…」
「文系なアナタには難しかったですかネェ?」


僕が体育会系でもあなたには勝てないと思うんだ…。

そんな僕の心の呟きを知らない彼は、他の遊びにすればよかったかと悩んでいる。

貝合わせなら負けない。
カルタなら同等だろうか。
…まあ、持ってきてしまったものは仕方がないのだけど。


「ルールはルールですから、罰ゲームは受けてもらいますヨ〜?」


にこ、と笑む彼は、なんだか笑顔がやけに輝いて見える。

…まさかとは思うけど
罰ゲーム目当てで選んだのでは…ないよね?


「罰ゲームは何?」
「一般的には顔に墨で落書きするみたいなんですケド…」


そう区切り、僕に歩み寄って顎を持ち上げる。


「アナタの綺麗な顔を汚したくないので、
キスさせてもらいましょうか」


やっぱりしたいだけじゃないか。
わかっても、逆らえない。
別に罰ゲームじゃなくても僕は彼を拒めない。

近付く彼に瞼を落とし、重なる唇に愛しい気持ちが引き出される。

少し長いキスを交わして離れた彼は、満足そうに笑う。
僕は恥ずかしいばかりだ。


「せっかくですからもう少しやりましょう?」


アナタが全敗したら女装してもらいましょうかネー、と笑う彼に、墨で落書きしてやろうと強く思った。





(似合ってますヨ、ヴィンセントv)
(…なんで…花嫁衣装…ッ////)
(クスクス、
このまま挙式あげちゃいます?)

2010.01.03