いつもいつものほほんとしているお2人。

甘さは抜群ですけれど

もう少し何かないのですか!





お嬢様、たくらむ。
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sbirci






今日はザクス兄さんが仕事オフの日。
そんな好機な日に、彼が恋人のもとへ行かないわけがありません。
それをこっそり誘d…見ていようと、
私もひそかにお休みをいただいているのです!

しかし簡単には彼を追尾できません。
素人の私と騎士の彼ではバレてしまうのが当たり前です。
だから…


(時間差で目的地へ辿り着きましてよ)


大幅に時間をずらし、到着したのは相も変わらず暗い邸内の一室。
協力者エコーさんのお部屋です!

以下は声が響かないよう、小声です。


(ご協力感謝致しますわ、エコーさん。
早速ですが、あちらの様子を窺う手段はあります?)
(はい。
壁にくっつけば聞こえます。)


防音効果はないとのこと。
好都合です(←


(………普通の会話をしていますわね。
けれど、これではザクス兄さんは着火しませんわ…)
(無駄に理性がお強いようですしね。)


ええまさに無駄なくらいに。



(……エコーさん)
(なんでしょう。)
(甘い飲み物はありますか。
冷たいもので)


ありますが、とエコーさん。


(お持て成しとして持って行ってくださいません?)
(いいですが…。)
(では…)





コンコン。


「失礼します、ヴィンセント様。
良い茶葉があったのでティーセットをお持ちしました。」
「ん…入っていいよ」


壁越しに聞こえる声。


(さあ…頑張ってくださいまし、エコーさんっ)


そう心の中で応援をしながら、成り行きに耳を傾ける。
小さな会話が交わされている。

そして少しの間を開け、飲み物が床にたたきつけられる音と、カップの鈍い音。
それと、ヴィンセント様の驚いた声。


(少し申し訳ないですけれど…上手くいきましたわね)


さっきエコーさんに頼んだのは、
『甘い飲み物をヴィンセント様にかけてきてほしい』。

主にというあたり、機嫌を損ねたら罰が待っているものですが…
最近は罰がそんなに厳しくないとのことで、承諾いただけました。


「申し訳ありません…、拭くものを持って参ります。」


そう言って急いで部屋を離れるエコーさん。
私は更に壁に耳を寄せる。


「大丈夫ですカ、ヴィンセント」
「うん…なんとかね」


火傷はしないように、私もエコーさんに頼みましたから大丈夫なはずです。

しばらくザクス兄さんが無言になり、少ししてから口を開いた。


「…顔、濡れてますヨ」
「え……、ぁ…」


顔を舐めているのか、ヴィンセント様がくすぐったがる声がする。
うふふ、ザクス兄さんは甘いものがお好きですわよね。


「、ザクス…っ、も、もうい…っ」
「まあまあ、そう言わずに」
「エコーがタオル持ってくるか、ら……っ、ん…」


くぐもった声が響く。
こ、こ、これは…


(キスですか!
ザクス兄さんったら唇を奪ったんですか!)


そこまでやるとは期待していなかったので私は大興奮。
時折聞こえる静止の声が妙に色っぽい。


(いっそそのまま押し倒しておしまいなさい!!)


きゃあきゃあと心の中で騒ぐのを懸命に抑え、静かに成り行きに耳を傾ける。

ようやく離れたらしい彼は、ヴィンセント様に不満を言われている。


「も、もう…
恥ずかしいじゃ…ない…」
「クスクス、
いつもより敏感でかわいかったですヨォ…?」



キスであんなに感じるんですネ、なんて返せば、ヴィンセント様の恥ずかしそうな声。


(ラブラブですわね!
ロマンですわ!)


激しく堪能して有頂天になっていれば、エコーさんが戻ってきたらしくノック音がした。

それからは普通のやりとりでしたけれど
ザクス兄さんの恋愛を少しでも聞けて満足でしたわ…!!





(ヴィンセントはワタシのです)
(喘ぎ声は聞かせませんよ)
(ねえ、シャロン?)

2009.12.23