ああ、
今日は仏滅だ。
鬱になれそうな気がする…



..卑怯者



放課後。
俺は帰宅すべく、校内をとぼとぼと歩いていた。
今日の午前にあった出来事に、さすがの俺でも気分が重く。
屈辱と悔しさで頭がおかしくなりそうだ。

家になど帰りたくはないが、学校にも居たくない。
今の俺には、自分が崩れてしまわないようにと歩くしか方法がなかった。


今、教室外に生徒は誰も居ない。
もちろん見張りの教師も居ない。
誰にも感付かれないように気を張る必要がないのが、更に俺の心中を寒くする。

(俺、こんなに弱かったっけ)

強いと慢心したことはないが、弱いと自認したこともない。
別に、自分から目をそらしていたわけではない。ただ自然に自身を高めてきたから。

今の俺は、まるで誇りを汚されて挫折しているかのよう。

(はは…、ダッセェ…)

しかし、それほどまでに屈辱を感じたのは事実で。
もはや悲しいやら苦しいやらわからず、涙が出てきそうだ。
さすがに泣きはしないけれど。


とぼとぼ歩き、校門が見える。
もう少しで学校外だ、と思った俺の視界に

ピンクが居た。

…なんで居るんだ。
ここで会ってもうっとうしいだけだというのに。
逃げる気力もない…

どちらにせよ校門は一つしかないので、無視決定で歩いていく。
するとあちらも気付いたのか、俺に視線が向く。

「やあやあスパちゃん。
どうしたの花嫁みたいな顔して」

そんな幸せそうな表情、断じてしていない。

俺は普通に無視して歩を進める。
が、通り過ぎる時に突然抱きしめられた。

「どうしたにょろ?
とっても暗い」

わかってんのにさっきあんなこと言ったのかよ。

急に不安定さが増して。
このままではいけないと思い、小さく反抗する。

「…離せ」
「やだ」
「……離せ!」
「やだ」

俺はお前が…
…嫌いなんだ…
触られたく、ない

「俺はスパちゃん好きだもん」

やめろ

「つらそうなの素通りなんて、無理」

やめて、くれ

今の俺は…隙間だらけなんだ
入ってくんな

俺の気持ちなど露知らず、ハスタは俺を強く抱きしめる。
もう気を強くなんて、保てなくて。
俺の目から涙が勝手に零れ落ちた。

あたたかい…

「…卑怯…者」
「なにが?」
「なんでもねえよ」

今は…今は勘違いしてやる


だから…
お前の腕のなかで、安心させろ





再録 2011.01.29