どんな言葉もモノクロの世界で

君の言葉だけは、鮮明な色だった





強い響きを帯びた声が
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Je m'attire






「司ー!」


声がする。
記録屋にいた僕は振り返り、声の主を探した。

トキオがカオスゲートから走ってきているのに気が付き、彼がたどり着くまでその場に待機する。

挨拶をした彼に挨拶を返し、何か用、と尋ねた。


「このエリア、すっげー景色いいんだ!
一緒に行かないか?」


そう言って目を輝かせて。
僕の返事に期待しているらしいその瞳に、少し気が押される。
つい、ひねくれた言葉を彼に投げかけた。


「……別に僕じゃなくてもいいんじゃない?」


なんて悪い癖。
彼がくれた好意に、なんて返し方。

素直に頷けたらどれだけいいだろう。
彼の気分を害するようなことを言う、自分が嫌いになる。
他人の好意を受け取るのが苦手なんて、言い訳でしかないのに。

そんな僕の心中など全く知らない彼は、僕の言葉に反論してきた。


「オレは司と行きたいんだ!」


だから、なっ、行こう!
そう何度も誘う彼に、さすがに悪癖も身を潜める。

僕だから行きたい、っていう言葉に、柄にもなく心が熱くなる。
受け取るのが下手な僕でも、鮮明な彼の言葉は受け取りやすかった。

きっと、僕は誰かにこんな扱いをされたことがないから。


「いい…けどさ……」
「マジ?!やった!
じゃあ早速行こうぜ!」


特等席教えるからさ、と言って、僕をぐいぐいと引っ張る。
引かれるままに、エリアへとついていった。





(仲が良い人の言葉でも受け取り難いのに、)
(なんでトキオの言葉は心に響くのかな)
(ふふ…嬉しいからじゃないですか、司)

2010.03.28