「うーん…」

2月14日。
室内帽子の彼は何やら悩んでいた。





「何唸ってるの、スパーダ」
「お、マリアージュ。
いやな、他のギルドから宅配来てるんだけどよ」

これ、と言って彼が指す先には、大量の箱。
宛名は全部彼で、送り主は全て女性の名前。

…ああ、今日はバレンタインデーか。

「中は全部アレなわけ?」
「みたいだな」
「モテモテねえ、スパーダさん」
「テメェわざと言ってんだろ」

褒められても嬉しくねえよ、と言いたそうな眼差しでこちらを睨むスパーダ。やや口元がぴくぴくと震えている。

しかし数秒睨んでも笑顔を崩さない私に呆れたのか、顔を逸らして再び箱に目を向ける。

「今年は移籍で少しは減ると思ってたのに…」

むしろ増えた。と言ってため息。

…毎年この有り様らしい。
スパーダはそれを目の前にして頭を抱える。

「食べきれないなら誰かにわければいいじゃない」
「それって相手の気持ちに悪ィ気がすんだよな…」

なんて律義な。
しかし誠実な彼の性格らしい。

私が軽く苦笑すれば、彼は「笑うなよ」とむくれる。


「毎年全部食べてたの?」
「いや、前の年はギルドにすげえ食うやつ(コーダ)が居たから…
その、3分の1ずつ?」

分けて総量を減らしてたらしい。
…けど、結局全部食べてるんじゃないの。

「でも今年は居ねえしな…イリアは肉命だし。
どうせゼロスやリオンやルーク周辺が大量にもらってるだろうし」

当たりだ。
今年のバレンタインチョコの量に、甘党のリオンも女性好きのゼロスも少々青ざめていた。
人気者は有名なギルドには来るものではない(禁句)

それに、大佐なんかは多分全部ばらまくように分けていくだろう。
半数が女性でも。

彼はしばらく唸りながら考えていたが、埒が明かないのか何か浮かんだのか、唸るのを止めた。

「…決めた。前のギルドに転送する。
今年はお前の以外欲しくねえから」

………はい…?

「な、なんで私なのよ」
「そのまんまの意味だぜ?」
「そ、そのまんま…って…」

意味がよくわからないよ、と言って私は逃げ腰になる。
わかってるけどね、この展開はね、ちょっとあの、(動揺)


それくらいわかっているらしい彼はいやに楽し気な笑みを浮かべ、私の腕を掴む。
ぐい、と引き寄せられて体勢を崩した私の耳元で、ぼそっと呟く。

「言わないとわかんねェか?
…お前からのチョコが欲しい、って言ってんだよ」
「…………////」

くれるよな?と言って満面の笑みを浮かべる彼に、結局勝てないのでした。





..お前の以外、いらない。

(でもスパーダ、私チョコ作ってないよ)
(………(青筋浮かべていい笑顔)
今から作るか今すぐキスされるか、どっちがいい?)
(Σ?!////
つ、つくります!)

製作 2009.02.14
再録 2011.01.29