俺の家?



アッシュの家?



俺の場所。






ひだまり







「お帰りなさいませ、ルーク様!」

そういって私がお迎えするのは、私が仕えているファブレ公爵家の御子息、ルーク様である。
つい最近まではメイド達の間でもレプリカがどうこう言っていたが、元からそういう話が大嫌いな私は変わらずルーク様に仕えていた。
その姿がメイド達(というか共感していらっしゃった奥方様)の目に留まったのか、今やレプリカなどという言葉は皆無である。

そうして受け入れられたというのに、ルーク様の表情には陰がさしている。

人を幸せにするにはまず自分が幸せであり笑顔でなくてはならない。私はめいっぱいの笑顔でルーク様に話しかけた。

「ルーク様、お紅茶は如何致しましょう?」

いつもの調子で注文を聞き、お紅茶をいれて持ってくる。

ガイとティアさんとルーク様にはレモンティーを。
アニスちゃんとイオン様にはアップルティーを。
ナタリア様とジェイドさんは普通のお紅茶を。

皆さん難しい話をしてらっしゃるようなので、私は退室することにした。





「マリアージュ」
「はい?」

そろそろ仕事を終えるかというときに、ふとルーク様が私をお呼びになった。
何事かと軽く首を傾げながら、呼ばれた方へと走っていく。丁度中庭かな。

「如何なさいました、ルーク様」
「様はつけないでくれ」
「でも」
「命令。」

命令と言われ、私ははいと頷く。不本意ながらも仕える方の命令は絶対だから。

「…で、何の用でしょう?」
「あ、ついでに敬語も禁止」
「…さすがに使い難いんですが?」
「いい。俺のワガママ。」

何か様子がおかしいなあ…と思いつつ一応頷く。
(最近の)いつもの彼なら、こんなことは言わないのだけれど。

不思議に思いながら彼を見ていると、彼もまた私をずっと見ている。…何か顔についているだろうか。

「…お前は本当の主人が違っても同じなんだな」
「…は?」

彼の言葉に、私は思考を疑問符でいっぱいにする。しかし次の瞬間には意味に気付く。
“お前の主人はアッシュだろ”と言いたいのだろう。

「お前、アッシュが屋敷に居た頃に来たんだろ?」

まあ確かに私は現アッシュ様が八歳のときに来た。(その頃実年齢七歳で)
でも私は両者共主人だと思っている。現アッシュ様に仕えていたとしても、現ルーク様には七年お仕えしている。その事実は変わりはしない。

「私の主人は2人です」
「わかってる。
…俺がレプリカって屋敷に広まった時、視線が変わらなかったのはお前と母上だけだろ?」
「変える意味ないもの」

自分を否定したいでもなく話が進んでいる。この人は何が本題なのだろう。

そう疑問に思いながら話をしていると、

「それを確認したかった」

と言い、ふ、と彼が笑ったかと思うと、次の瞬間には彼の腕の中に居た。

…勿論ほかのことを考えていた私にはすぐに状況把握できず。逃げるタイミングを逸してしまった。

「!?ちょ、「逃がさねえ」

彼の腕から逃げようとした途端、力が強くなる。元々非力で有名な私に逃げられるわけもなく。

「な、ルー…」

逃げることがかなわず、彼の表情も読めない。何がなんだかもわからない。

「逃がさない」





―――俺だけのひだまり。





そう耳元で言われて、私は彼から逃げられなくなった。




製作
再録 2011.01.29


 


 
 

















































 
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