君を好きになったのはいつだっただろう。



最初は、記憶を継承していない君が憎かった。
何故僕だけがこんなに苦しまねばならないのか。記憶を継承して罪を背負い、異邦人の証たる刻印に縛られて。
生きている意味も見い出せない僕の前に、ただの人間になり下がったクレスメントが現れた。それが憎かった。

けれど、それは僕の逆恨みでしかなく、君はなにも知らずに僕になついて。
冷たくしても摺り寄ってくる君に、哀愁を感じたのが始まりだろうか。
ねす、ねす、と、嫌悪を示さない君が愛しかった。
僕の居場所を作ってくれた君が、なによりも、誰よりも。

なあ、知ってるか?
僕は相反する気持ちを持ってる。
こんな世界、消え去ってしまえばいいと。滅びてしまえばいいんだと思ってる反面、君が笑顔でいてくれる平和が欲しいんだ。

君が好きなほど、滅び去って欲しい願望は募る。同じ質量で僕を支配する。
それは、君を異物や遺物とする世界が嫌いだから。

僕は君がいればいい。
僕には君だけがいればいい。
だから、いらない。
だから、いる。

僕にとっては君がすべて。