葉…

お前を見てると…

自分がわからなくなる……





「ハオ、どうした?なんか悩み事でもあるんか?」

―…その悩みのもとはお前なのに

でもそんなこと、葉が気付くはずない。

「なんでもないよ」

ふ、と笑顔を見せてやる。
しかしそれを見た葉は、僕を見つめたまま言う。

「ホントか?なんか、哀しそうだけど」

―また。
またお前は僕の心を読み取った。霊視の能力など無いはずなのに、お前は敏感に他人の心を察知する。

以前、お前が僕に問い掛けた言葉が気になって…ずっと考えてた。
けれど見つかったのは、答えではなく
葉が好きだという感情。どんなに否定しようと、消えることなく募ってゆくばかりだった。

お前は、僕の隠していた涙を、感情を、見つけてくれた。

ただ、一人。

「気分悪いんならファウストに言って診てもらうか?」
「ううん、大丈夫だよ」

笑んだまま答える。今度はちゃんと笑ったはずだ。

「そうか。あんまり無理すんなよ、ハオ」

……これは、無意識?無意識に…癒やしてくれてるのかい?

僕はお前にとって…なんなんだろう。

わからない。
“苦しい”と言ったら
お前はどう受けとるだろう。

「…葉」
「んぁ?」

お前が好きだよ…
前の僕なら言えた言葉なのに。

言うことができない。傷付けたくない…悩ませたくないから。

これは卑怯なのかな…

「…?どうしたんよ、ハオ」

お前のあどけなさが

お前の優しさが

僕の何かを鷲掴みにする。

言えない…

けど、

確かめたい。

「葉…」
「へ?ぁ…」

奥手な僕ができる、確認のための抱擁。

「…ハオ?」

それでもお前は鈍感で。

ぎゅ、と抱く腕に力を込めた。
鼓動が伝わるかもしれないくらい、ぎゅっと。

「ハオ…オイラな」
「…うん?」

いきなり葉に話をふられ、耳を傾ける。

「お前が兄貴に見えん…」
「…何、それ」
「だって…」

“好きなんよ”



続いた言葉。

僕は唖然とした。

「………」
「へ、変…よな…」
「変じゃない…」
「うぇ?」


だって

僕もお前が好きだから。

偽りなく…





製作 
掲載 2005.10.19
移動 2006.07.22
再録 2011.01.23