僕だって、
会いに行きたいんだよ

きみのところに





デジタルリアライズ
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Ich will mich treffen






「ねえ」
「………」


ぽつり。
無言で僕の話を聞いているクラリネッテは、瞳に不思議そうな色を浮かべた。


「トキオは、リアルデジタライズでこの世界にきたんだよね」


リアルデジタライズ。
彼はその方法で、生身のままこの世界に来たと聞いている。

僕が出会った時には、ただのPCになっていたけれど。

無言のクラリネッテに肯定を感じとり、どこか独り言のように続けた。


「逆ってできないのかな」


それに彼女は驚いたようで、目を丸くした。
話を盗み聞きして興味が湧いたのか、どこからともなくフリューゲルが現れる。


「逆って、君をリアルに具現化するってことかな?」


それに頷いて肯定。
メトロノームも話に加わり、意見が交わされる。


「理論はありますが、難しいのではありませんか」
「そう?
生身をデジタライズよりは現実味あると思うよ、俺は」


漫画でもよく見かけるじゃない?と笑うフリューゲル。
その軽い考え方にため息をつくメトロノーム。

僕はぼーっと2人の話を聞いている。


「第一、君はリアルに何の用があるんですか」


言い出すからには何かあるのでしょう、と問う彼に、
ぼーっとしたまま答える。


「トキオに会いたい」
「………。」


あれ、何その反応。
僕は至って本気なんだけど。

フォローするように、クラリネッテが口を開く。


「…嘘はついてない」
「…ええ、今のはさすがに私でもわかりました」
「いいネッ、会いたいって気持ちが滲んでるヨ!」


ぴょんぴょんと跳ねるチェロも、どこか楽しそう。

会いたいよ。
だって今、トキオは『テスト週間』とかいうものでログインしてこない。

みんながいても、彼がいないとなんだか寂しくて。

考えたらまたつらくなって、机に顔を伏せた。 
そんな僕を見て、チェロがメトロノームを後押しする。


「やってみようヨ、ノム君!」
「…まあ、いいでしょう。
けど、危険だとわかったらやめますからね」


いいですね、と確認の声が向けられ、僕は小さく頷いた。





(では、被検体はガイストでやります)
(エエ、僕はやだなア)
(反存在の被検は危険です
まず危険を減らすことを重視します)
(…やる気だネ…メトロノーム)

2010.03.25