エコーは、言いたいことがあります。
主はこんな状況です。
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Io esercito un modo
「そうは思いませんか、エコーさん!」
ばしん。
机が震え、食器が揺れました。
レインズワースのシャロン様は、不満がおありのようです。
ぼうっと話を聞く限り、ブレイク様とヴィンセント様にはロマンスの熱さが足らないだのどうこうと仰っています。
それは、エコーの主に求めるには要素が足りないと思いつつ、無言を通しています。
「エコーさんはどう思います?」
話をふられました。
恋愛に関して話をふられても、エコーにはわかりません。
困って沈黙していたら、シャロン様も気付いたらしく
話を少し変えて、聞いてきました。
「…ヴィンセント様の日常を見ていて、エコーさんは何か思うことはありますか?」
あったらお聞かせくださいませ、とシャロン様。
「思う事…なら、あります。」
「どんなことですの?」
机に肘をついて聞く体勢に入るシャロン様を前に、
エコーはすーっと息を吸って言い始めます。
「まずヴィンセント様は物思いに耽ると長いのです。長いしため息も多いし仕事は進みません。それは別にヴィンセント様の勝手なのでいいのですが、ブレイク様の名前を呼びながら寂しそうにされるとエコーはいたたまれなくなります。かといってエコーには何もできませんし、ブレイク様だって忙しいですから来ていただくわけにもいきません。それが早いときは起床直後から、長ければ寝る時まで続くという重症ぶりです。ヴィンセント様はああですから、寂しいと思うと感情に振り回されがちです。色々とやってはみているのですが殆ど上の空でして、エコーのお仕事はヴィンセント様の従者というよりヴィンセント様の恋の病のケアのような気がしてなりません。幸せになっていただきたいとは思うのですが、エコーの疲れが先に出てくるともうたまったものではありません。」
まくしたてたエコーにびっくりしたのか、言い終わって数秒、シャロン様は固まっていました。もとの表情でシャロン様のご返答を待っていると、何故か悔しそうになさいました。
「エコーさん」
「はい。」
「私は今…猛烈にエコーさんになりたいですわ」
はい?と聞き返しました。
するとシャロン様の瞳は高揚の色を帯びていて、熱っぽく解説してくださいました。
「ザクス兄さんときたら、ヴィンセント様と同じような気持ちのくせにしっかり自制するのです!
ヴィンセント様のかわいらしい反応…ああ見たいですわ…」
…その後もしっかりとお二人の話でしぼられたのは、言うまでもありません。
(ひどい時は眠れないみたいです)
(まあまあまあ)
(ため息をつくヴィンセント様が気になってエコーも眠れません)
2010.03.25