さくら。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ、あの……」
「……ん?」
春が来て数週間。
放課後、学校の敷地内にある一本の満開の桜の木を眺めていると一人の男の子が後ろから私に話し掛けてきた。
「何……してるんですか?」
黒髪に眼鏡というあまり冴えない容姿の男の子。
緊張しているのか少し声が裏返り気味だ。
「見て分からない?
桜を見てるの」
視線を桜に戻すと、花びらが一枚私の方に飛んできた。
「ん?あれ……」
頭に付いたような気がして取ろうとするけれど、見えないから中々難しい。
「……はい」
苦戦しているうちにさっきの男の子が正面から花びらを取ってくれた。
「あ、ありがとう」
近くで彼を見てみると、眼鏡の奥に隠れた瞳が優しく光った。
気のせいかもしれないけど、そう思った。
「ねぇ、名前と……アドレス教えてくれない?」
思わずそう聞いたのは、桜をバックに優しく微笑む彼に少し心が惹かれたからかもしれない。
―end―
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蝶々くらべ様4月分提出作品です。
こんな出会いもいいんじゃないかな、と。
丁度桜の季節ですので。
良かったら感想お待ちしています。(2011.4.23)
TOP