小説 | ナノ



…幾度なく繰り返される敗北の物語…ー


私は貴女から産み出されました

「ひっく…コスモス…様ぁ」

変わり果てた秩序の聖域
12回目の戦いが終わり

コスモス様は皆を守るために
次の戦いのために
自らを犠牲になされました…


そして最後の力を私に全て注ぎ込んで…

私は生を受けたのです


調和の神の力で産み出された私はまだ幼く、どうしたらいいか分からずにひたすら泣き続けるだけ

誰も居ないこの敗北の地でひたすらコスモス様の名前を呟いてさ迷い果てる。


コスモス様…私は何の為に産み出されたのですか?

私は貴女の様にはなれません…


貴女の様な調和の女神という"神"にはなれないのです



ぱしゃりと水の音が鳴り響く

びくりと跳ねて振り返ると、青い鎧の男の人がこちらを見ていました。


「ひ…っ…」


カオス軍の者かもしれない
そうなら間違いなく…

"殺されてしまう"


そう思うと足が思うように動かなくて、その場で立ちすくむ。

怖い…怖くて堪らない


でも足が震えて言うことを聞かないから逃げれない…


男の人は早足でこちらに金属音を鳴らしながらやってきて、もうダメだ…と思い、殺されるくらいなら自分から命を絶とう…

そう思い、私が胸に手を当てた瞬間…ー。

男の人は私の前に跪いたー…。


「君は…新たな調和の神なのか…?」

凛としていて、とても厳かな声だった。


男の人は顔を上げると、宝石のような碧眼が私を真っ直ぐ見ていて、銀の髪の毛がさらりと揺れた。


「調和の…神さま…?」


私が怯えながらも男の人への警戒心を弱めると、男の人はふわり…と優しい笑みを浮かべてくれた。

「君からは闇の気配がしない…大きな光の力を感じるんだ」

「……」

それはきっとコスモス様が残してくれた光。調和の光が私の体に託されているのかもしれない。

でも…
私はふるふると首を横に振る。


「私は…コスモス様から産み出されただけで…神様では…ありません…」


存在の意味すら分からない私


そう思うと苦しくて…
また涙がじわりと滲む


…すると男の人は未だに震えて落ち着かない私の体を抱き締めてくれた…ー。


「ひぅっ…」


突然の温もりに困惑する。
そんな私に男の人は背中を数回、優しく叩いてくれて…


鎧越でも感じる人の体温


…男の人の心臓の音が何だか心地よくては私はおずおずと背中に手を回した。


「"生きている"それが君の存在している意味だ。分からないのならそれでいい。意味は見つかるものなのだから…」


体温、声、鼓動
男の人にあるものが私にある。
これが生きているって証拠…?


私が神様じゃなくても
存在している意味ですか…?


「今から私の仕えるべき主は君だ」


そう言って男の人は私の髪に忠誠の証…口付けした。

ふわふわする気持ちになる

あぁ、コスモス様…

私、この人と生きたい…
生きたいです…

そう願っても
良いでしょうか…?


「貴方の…お名前は…?」


私が男の人の目を真っ直ぐ見つめて言う。


「ウォーリア・オブ・ライト…だ」


貴方らしい名…

光輝いて眩しすぎる貴方に…

私は信頼の笑みを零すと彼の手に触れたー…。

コスモス様

私、不思議な気持ちを覚えました

貴女がいなくなって胸が締め付けられるような痛みの感情

人の温もりを感じた時にこみ上げてきた幸せな感情

そして…

彼を見ると胸がふわふわ暖かくきゅうと疼いてドキドキする不思議な感情…

私、貴女の様に立派にはなれないかもしれないけど…

彼と一緒なら大丈夫って思います


調和の光を受けた少女は
揺るぎない光を同時に受け

"女神"として今、鮮やかに飛翔しようとしていたー…。


わたしは神ではなかったけれど

いつかは貴方を
照らす光となりたい


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