空契 | ナノ
4.信頼できる関係 (4/6)


ぅ、ぎゃあああーーーーー?!


はっはっはっ!おはよう皆の衆!レオちゃんデスヨ。
…ごめんなさい。ちょっと今テンション変。我ながらうざいと思う。でも、今ならドジョウ、いやヌマクロー踊りできる。なんだそりゃ。
しかし、これは仕方ない。そんな訳があるあるのだよ。
だって………、
目が覚めたら爽やかな朝で、気持ちいーなぁなんて欠伸して寝返ったら、
隣に超美形の見知らぬ兄ちゃんが寝てたらさ、そりゃあ、ね。誰だって驚くと思うのよ。俺は一瞬笑顔で固まって、とりあえず叫びました。
不審者か不審者なのか!?と思わず後ずさったのだが、ベッドからそのまま落下。おかげで頭を強打。…泣いていいのかな?
じゃなくてね。……誰っ!?唖然茫然としていると、その美形少年が唸り声を上げた。
今頃眼を覚ましたらしい。ハッと身構える俺。

「ー……だよ」

「朝っぱらからうるせ…」と、ポツリポツリと言葉を眠そうに区切りながら、ぼやく少年。俺の声で意識が覚醒したらしい彼は髪を掻き上げ、むくりと起き上がった。
緑の髪だった。さらさらとしていて、艶のある、短い緑の髪。その綺麗な髪の少年は、さっきも言ったように美形だ。鼻筋はすっと通っていて、緑の髪から覗く碧い眼は鋭いけど、強い。モデルのような顔は、まだ少し幼さが窺える。
朱い無地のTシャツから窺える体は、細身だが無駄がなく鍛えられていた。モデル。いや、トップアイドルって感じ。
つーか、朝っぱらからうるせぇな………って、

「元凶はてめぇだぞこらぁ!!!」

何でベッドで一緒に寝てんだこいつは!!!

「変質者!? 変態!? どっちじゃオイ!!」

「どっちでもねぇよ馬鹿」
「馬鹿言うな変質者」

「・・・結局変質者扱いか」


「ちげぇよ」と変質者は言うと、でっかい欠伸。なんだこの変質者。どんだけ緊張感ねぇの。低血圧か。野菜食え。

「あ、野菜で思い出した。
アイクどこだし」
「んで野菜で思い出すんだ」

昨日の夜、寝ようと思ってベッドに入ったんだけど、アイクは床で寝るって言い張ってて……でも寒いだろーし俺が毛布に引きずり込んで、抱きしめたまま寝たんだよ。
だけど、なんかアイク君いないんだけど。必死に抵抗してた可愛いアイク君がいないんだけど。

「そうだアイク!! 野菜って言えばアイク!!」
「うるせぇし野菜じゃねぇし」

「野菜!! アイクは?!
野菜はどこ?!」
「野菜じゃねぇっつってんだろぶん殴るぞ」


少年が「こいつ馬鹿か」という視線を送ってきた。オイコラてめぇは変質者だろーが。
アイクの姿はなかった。少年が眠そうに目を擦りながら座っている布団には居なそうだ。
俺は部屋をぐるりと見渡す。ゲンさんに借りたこの部屋は、ベッド以外の家具がないから見通しはいい。だが、やはりアイクは居ない。

「うっそーん?」

アイクが、居ない?
窓か、扉から部屋を出て行った? なら、俺が気付く。これでも俺は、そういうのに敏感だ。出ていった感じはしない。
でもアイクは居ない。
………代わりに、美形少年が一人。
目付きの悪い少年を見詰め…頬が引き攣らす。

「………んだよ」

え、ちょ、まさか…、この目付きの悪い美形少年が………まさか……っっ…!!!

「ゲ………」
「“げ”?」

ゲンさぁあぁぁあああんんーーーーー!!
アイクがぁああぁぁあぁあアイクが見知らぬ少年Aに食われたぁああぁぁああーーーーーー!

 

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