空契 | ナノ
20.求めた結果の先 (4/6)

   



「……さぁ、マジどうしようか……」

「…ポケモンセンター………は、まずいだろうな」
『あぅー………あの御曹司ぃ…』

俺とユウがため息を吐いた。ひゅるるーと冷たい風が吹き俺等の精神力に追い討ちをかけるようだ。やめとくれ北風ー。
こんな寒い野外にいつまでもいるのはかなり辛い。だからといって………全ての店や家が電気を落としたようなこの町で、24時間営業のポケモンセンター以外に泊まれる場所なさそうだ。それでもポケモンセンターは使えない。……うん、怖くて。
俺、あれほど色々暴言吐いたからなぁ。怒らせただろうなぁ、ダイゴさんのこと。しかも、俺はこれ以上ない不審者だ。あいつが俺を追っている可能性は、なくはない。いや、70%の確率、かな。そしてあいつがポケモンセンターで聞き込みをする可能性は80%だ。
ポケモンセンターは無料で泊めつくれるし飯食えるし、ポケモントレーナーには最高の場。普通なら利用するだろう。

『うぅーん…でもさぁ、レオ頭いーからセンター使わないって分かるんじゃないかなぁ?
だから裏かいて泊まってみたらー?』

「あー逆にな」

「…いや、あいつの場合駄目元で来る可能性だってある」
「……見つかってからでは遅いからな。
…控えた方が良いな。ポケモンセンターは」

『あー……そぉだよねぇ……だよねぇ……』

「あー本当に悪いな、みんな」

お前ら、ジムバトルからちゃんと回復してねぇのに。

「……んだから、どうでもいいんだっつーの」
『そぉーそぉ!
僕も蜥蜴もほぼ無傷だったし!』

「私も問題ない。
まだ頑張れるぞ。レオ」


「………無茶すんなよー」

ごめん。
口では適当な言葉しか出なくて、顔ではなにも変わらない笑顔。上っ面だけで、嘘ばっかり。でもこれぐらいしか言えなかったし、言うつもりもなかった。
ごめん。とか、思ったけど、くどいし。なんか。なんか、わからないけど。口に出すことはしなかった。
もしかしたら、これは意地だったのかもしれない。この時は、まだ気づかない事だったが、 ブレーキがかかっていたように言葉はこれ以上出ないのだ。
────「ごめん」の「ご」が……声にならない。喉に言葉がつっかえる。なんか……魚の骨がつっかかったみたい。
意味が分からないと首を傾げる。病気でもなったのだろうか俺は。……一体なんのだ。もどかしい気持ちを抱えながらもそれを解消する方法が見つからなくて、俺は目を閉じ、腕に力を知らず知らずの内に込めていた。───それがアイクに強く抱き付くような結果を生むなんて、微塵も考えなかった。
僅かにアイクの体がぴしりと固くなる。それでも俺は、ただあったかいなぁ、と感じるだけだ。
それでも何かがひしひしと突き刺すように胸が痛み、謝りたくてもやもやする謎の気持ちはまだあって、


─────ごめん─────


風に髪を揺られながら、俺は目を閉じて強く思いを込めた。できれば、彼らに届いてほしい。届けばいいな。
なんて投げやりな思いを、念じるように。
まぁ、当然、微塵も期待してなかったワケだけど、

「…、」
「え?」

『んー? どぉしたのふたりとも』

アイクとナミがふたりして歩みを止めたのだ。
思わずギクッと俺は身を縮こませた。
あれ、もしかして俺口に出し…? だとしたらとても恥ずかしいのだが。しかし、彼らをじっと俺を見詰めると、それぞれ不思議そうな顔をした。

「………空耳か」
「…そうだろうか……?」

「(いや、だからなにが?)」


それは俺がなにも知らないときの話で、
約10秒後、寒さに震えながら俺が「野宿しよーぜ」と進言したため、忘れてしまったことである。

因みに、今夜は本当に野宿になってしまった。
大誤算のアホ。




   

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