『ねえねえ千景さん、私この間当たるって噂の前世占いに行ってきたんだ』
「へえ。結果は?」
『コンセントだった』
「冒頭から面白いこと言うのやめてもらっていい?」
『本当にそう言われたんだもん』
「それ本気で言ってる?」
『千景さんじゃないんだから。私が千景さんに嘘ついたことある?』
「ないから怖いんだよ。なに?当たるって噂なんじゃないの?」
『そうだよ』
「なのにあなたの前世はコンセントですって言われたの?」
『うん』
「そう言われてなんて思ったの?」
『へえ、そうなんだーって思った』
「君の頭弱いところが好きだけど、さすがにそこまでヤバい子だとは思ってなかったよ」
『千景さんも今度行く?』
「遠慮しておく」
『えー、気になるのに。千景さんの前世』
「だってその占い師怪しいし。そもそも前世なんて信じてるの?」
『信じてるよ。次に生まれ変わるなら鳥がいいかな』
「難しいかもね。前世では驚いたことに魂がなかったみたいだから」
『あっ待った!やっぱり人間がいい!』
「うわびっくりした。なに急に」
『だって人間に生まれなきゃ千景さんに出会えないし!』
「……………」
『……千景さん?』
「…………はは、来世も子守りかぁ」
『うわ失礼!来世は超絶美人かもしれないじゃん!』
「大丈夫大丈夫。冷蔵庫になっても見つけてあげるよ」
『ならないもん!ていうか冷蔵庫になった私見つけてどうするの!?どうしようもなくない!?』
「買い取ってあげる。一生2人で暮らせるね」
『…………う……なんか違う、けど………』
「けど?」
『…………それもちょっと楽しそうだね』
「…………ぷ、ははは!お前は本当に馬鹿だなあ!」
千景さんはからからと声を上げて笑うと、正面から私の身体を抱きすくめた。
頬に触れる彼の髪がくすぐったくて、少しだけ身動ぎをする。
不器用なこのひとの、真っ直ぐな愛情表現は珍しい。
なあに、突然どうしたの?
ぎゅっと抱き締め返して尋ねれば、私の肩口に顔を埋めた千景さんがぽつりとつぶやいた。
「……俺が冷蔵庫に生まれ変わっても、出来ればお前が見つけてね」
……私の馬鹿さに引っ張られちゃったの、とか。
平和すぎる日常に浸りすぎてしまったの、とか。
ツン多めの己のキャラクターどこに置いてきたの、とか。
突っ込みたいことは色々あったけれど、取り急ぎ。
思わずキスをしてしまった私の衝動は、恐らく間違っていないと思う。